初代頭取が行った痛恨の不正融資

初代頭取の古荘四郎彦(出典:『アサヒグラフ』 1955年2月23日号)

剛腕ともいえる優秀なバンカーが率いる銀行において、派閥争い・行内抗争は憑きもののようでもある。千葉銀行の初代頭取は大正期に川崎銀行などでも活躍した銀行家の古荘四郎彦氏。先に「九十八銀行を軸に3行が合併した」と記したが、行内体制の実態は千葉合同銀行の頭取であった古荘が実権を握った。

古荘はバンカーとしての手腕に磨きをかけ、剛腕を見せていった。その最たる出来事が、いわゆるレインボー事件である。1958年、銀座のレストラン「レインボー」を舞台にした不正融資事件。レインボーのマダムに行った10億円を超える不正融資が発覚し、古荘は頭取から失脚した。事件としては特別背任罪で起訴され、1961年、東京地裁は懲役3年・執行猶予3年の判決を下している。

少し長くなるが、『千葉銀行70年史』27ページ「6 高度成長期の経営と業績 不正融資事件の発生」を要約しておこう。

「当行は昭和30年代に大きな困難に直面した。1958年に表面化した不正融資事件(いわゆる「レインボー事件」)である。事件発生前の数年間、当行は東京エリアへ集中的に出店するとともに、都内の新興企業やレジャー産業などへの貸出を増加させていた。これらの融資は不良債権となるものも多く、その典型例がレインボーであった。古荘頭取の指示の下ルールを無視した不明朗な融資が積み上げられた。最終的には12億円近い資金を貸し込み、その多くが不良債権となった。1958年4月には国会でも千葉銀行問題として取り上げられ、 古荘が参考人として召喚された。古荘は頭取を辞任、さらに5月の株主総会ではほぼ全役員が退任する事態となった。この事件の影響とみられる預金流出は当時の総預金残高の5%にあたる 20億円、1956年3月末に地方銀行65行中11位であった預金量順位は1958年9月末には 21位まで低下した。また、当時の総貸出金約288億円に対し2割近くが不稼働債権となった」

時代背景や金融をめぐる環境・規制がいまとは異なるが、レインボー事件は耳目を集め、高度成長期の強気な融資拡大行為の徒花として他行にも大きな教訓になったはずだ。千葉銀行は後任の大久保太三郎頭取のもと経営改革を断行し、発展の礎を築いた。

銀行における「働き方改革」の先駆として

千葉銀行では1986年に女性支店長が誕生し、働き方改革の取り組みにおいては、2014年に女性行員のキャリア形成などを支援する目的で「ダイバーシティ推進部」を新設するなど、近年、銀行業界における「働き方改革」の推進役を果たしている。2015年には「女性が輝く先進企業表彰」(内閣府)において内閣総理大臣表彰を受賞した。

また、近年の地銀再編に関しては、経営統合によらない新たな地銀連携モデルを推進している。主な取り組みは次の3つのアライアンスである(「【武蔵野銀行】アプレ地銀の次の一手|ご当地銀行の合従連衡史」参照)。

1 千葉・武蔵野アライアンス

2016年3月に、埼玉県を本拠とする武蔵野銀行<8336>との包括提携を発表。業務共同化によるコスト削減や商品・システム等の共同開発、人材交流などを推進している。翌2017年には共同出資で千葉・武蔵野アライアンス株式会社を設立した。

2 TSUBASAアライアンス

2008年より地銀5行でシステム共同化への調査研究を行うTSUBASA(翼)プロジェクトを発足、現在は第四銀行・北越銀行・中国銀行・伊予銀行・東邦銀行・北洋銀行・武蔵野銀行・滋賀銀行が加盟行となり、TSUBASAプロジェクトを発展させたTSUBASAアライアンスを組織。先進金融技術の調査・研究を共同で行い、事務部門の共同化などの連携施策をとる。

3 千葉・横浜パートナーシップ

2019年7月、総資産(単体)において地銀首位の横浜銀行<8332>と業務提携を行った。運用商品の共同開発やM&A・事業承継での協働など営業面での提携で、地銀トップ行同士で協力体制によって収益拡大を図る。

地銀でありながら、ニューヨーク・ロンドン・香港に支店を擁し、上海・シンガポール・バンコクに駐在員事務所を持つ千葉銀行。近年はリテール部門で、たとえば顧客の相続面に関する営業も強化している。

千葉県内の銀行というと、1950年代後半から京葉地区の臨海部に延びる工業地帯の発展とともに預金・融資量を増大してきたイメージが強い。加えて近年は、銀行業界の劇的な環境変化を受け、新たな経営の変革を進めている。

文:M&A Online編集部