スポーツ用品大手のミズノ<8022>はカーボンナノチューブ(炭素原子が円筒状につながった物質)の研究開発、製造販売を手がけるスタートアップのカーボンフライ(東京都江東区)に出資した。
カーボンナノチューブを活用した新しいスポーツ用品を開発するのが狙いで、ミズノは資本参加と合わせて、カーボンフライと共同研究開発契約を結んだ。
カーボンナノチューブは、直径がナノメートル(ナノは10億分の1)レベルの微細な物資で、アルミニウムの半分ほどの重量で、鋼の20倍ほどの強度を持つため、宇宙や航空などの分野での活用が見込まれている。
スポーツ用品にこの物質を使うと、どのような特徴を持った商品が生まれるのだろうか。
カーボンフライは2022年1月に研究者によって設立された企業で、高品質なカーボンナノチューブの量産化に成功し、現在は製造装置Caltema(カルテマ)を用いて、粉、繊維、フィルムの3形態のカーボンナノチューブを生産し販売している。
カーボンナノチューブはゴムや樹脂、金属などと混ぜ合わせて使われるほか、電子部品などへの応用が進んでいるものの、量産化が難しく生産コストが高くなるほか、品質にもばらつきがあるなどの問題を抱えていた。
同社ではこうした問題を改善したことで、リチウムイオン電池をはじめ、航空宇宙、エネルギーなどあらゆる分野の基礎素材とし利用できるとしている。
2023年10月には三菱ガス化学(東京都千代田区)の子会社である日本ユピカ(東京都千代田区)と、小型衛星向けのカーボンナノチューブ複合材料の共同開発で合意した。
カーボンフライはミズノとの資本業務提携を機に、両社の技術や経験を活かし、スポーツ用品の新商品開発を加速するとしており、ミズノでも「従来にない製品開発が可能になる。スポーツ用品に新たな価値をもたらしたい」と期待を高めている。
軽くて強いというカーボンナノチューブを特性を生かせば、これまでにない軽量のシューズやウエア、テニスラケットなどの新しいスポーツ用品の誕生が見込めそうだ。
ミズノはコロナ禍の中、個人消費の落ち込みやスポーツイベント、競技大会の中止などの影響で大幅な減収減益を余儀なくされたが、日常が戻るにつれて業績が好転。
2024年3月期は国内外でサッカー用品の販売が拡大したほか、野球やバレーボールなど競技スポーツ用品の販売も好調に推移したことから、売上高は2297億1100万円(前年度比8.3%増)、営業利益は172億7900万円(同33.5%増)と、いずれも過去最高を更新した。
2027年3月期を最終年とする3カ年の中期経営計画では、引き続き過去最高の更新を見込んでおり、2027年3月期の売上高は2900億円、営業利益は250億円を計画している。
これまでにない新しいスポーツ用品が誕生すれば、業績はさら上向くことになるかも知れない。
文:M&A Online
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