9月21日に中国不動産開発大手・恒大集団の経営危機問題から株価は大きく下げたものの、24日に田村憲久前厚労相が河野氏支持を表明すると同609円41銭(2.06%)高の3万248円81銭と3万円台を回復する。この頃には自民党の派閥リーダーたちが河野氏の当選に警戒感をつのらせていると伝えられ、投資家の「河野政権誕生」への期待も高まっていたようだ。
だが、29日の総裁選は予想ほど河野氏の得票が伸びず、岸田氏の当選が決まる。すでに岸田氏優勢は揺るがないとの報道もあって、「自民党の変革」は遠のいたとの見方が広がり株価は下落。自民党新総裁の就任日に株価が下落してはまずいと日本銀行が忖度したのか、ほぼ3カ月ぶりとなる上場投資信託(ETF)買い入れで701億円を投入したが、同639円67銭(2.12%)安の2万9544円29銭に急落する。
投資家の「意思表示」がはっきりしたのは、岸田新総裁が党四役を含む自民党幹部人事を発表した10月1日だ。麻生太郎前副総理兼財務相に近い甘利明前税調会長を幹事長に、安倍晋三元首相が総裁選で強く推薦した高市氏を政調会長に選ぶなど、自民党のいわば「守旧派」議員を重用した。
一方、「変革派」と目される河野氏は広報本部長に「降格」される。河野氏を推薦した石破茂元幹事長に至っては自身の派閥から閣僚が出ておらず、完全に「干された」格好だ。
こうした「変革派」の排除を嫌気して、株価は同681円59銭(2.31%)安の2万8771円07銭と下落。値下り額、値下り率ともに、ここ2カ月間で最悪となり、中国の「恒大ショック」よりも衝撃が大きかった。日銀はこの日も再び701億円のETF買い入れを断行している。
5日も株価は同622.77円(2.19%)安の2万7822円12銭と下げ止まらない。岸田首相の下で自民党が変われるのか?少なくとも投資家の評価は否定的なようだ。衆議院議員選挙は10月31日の投開票が決まった。総選挙が終わるまでは岸田政権が本格的な政策を提案し、議論するのは難しい。投資家の岸田政権への評価は当分「辛口」のままだろう。
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