私は数年前からインソースでライターをしている。主な仕事はお客さまに情報をお届けするメールマガジンの原稿作成だ。文章を書くだけでなく、メール配信ソフト(※1)にデータを登録する「流し込み」という作業までが業務である。
4,5年前はシンプルなメールが主流だったが、最近の技術革新や環境変化のスピードはすさまじく、視覚的にわかりやすく、短時間で流し読みできるようなHTMLメールが主流になってきた。また、お客さまがスマートフォンでメールを受信しても美しく表示されるよう、CSSというプログラミング言語を駆使したソース(※2)を作る必要に迫られていた。
その頃の私は、日々メール配信ソフトのコードを書くことに悪戦苦闘していた。書くことが好きでこの仕事に就いたが、文章を考えるだけでなく、求められる形式に装飾できなければならない。今までは先輩が作ってくれた型にコピペ(コピー&ペースト(貼り付け))すれば済んだものが、そうもいかなくなってきた。年齢のせいか、首も肩も慢性的な凝りがひどく、老眼がすすみ、気持ちも後ろ向きになるばかりだった。
この先も長く働き続けられるのか、環境に適応していけるのか不安を感じ、そのせいか、部署の方針転換や改善が行われる度に、「えっまた変わるの?」と変化を前向きに捉えられない自分がいた。
◇ちょっと用語説明◇
※1)メール配信ソフト
プログラミング言語で入力すると、装飾された形でメールを配信してくれる
ソフトウェア
※2)ソース
「ソースプログラム」「ソースコード」ともいう。
人間の言葉を機械がわかるように書いたもの。
HTMLやCSSといったプログラミング言語で記述する
ひな型に貼り付ける方法でHTMLメールを作成していたが、CSSやHTMLの知識が不足していたため、ひな型の表示を壊してしまうことがあった。二段組が縦に一列になったり、中心揃えだったはずが左に寄ってしまったりしても知識が無いため自分で直せない。仕方なく最初からやり直すので時間だけが浪費される悪循環に陥っていた。年齢のせいにはしたくないが、自分の能力不足を痛感し、今まで真面目にやってきた自信も薄れ、頑張る気力が萎えてきていた。
ある日、同年代の同僚に、「メール配信ソフトが使いづらい。何度も保存して確認して、どこを直したのかわからなくなっちゃう。年齢的に限界なのかもしれない。もう辞めようか悩んでるんだ」と愚痴ってみた。すると彼女は「私も得意じゃないけど、コードエディタ(※3)を使うと良いと聞いてからはなんとかやっていますよ」とアドバイスしてくれた。
◇ちょっと用語説明◇
※3)エディタ
編集するソフト。文字を編集するならテキストエディタ、
ソースコードを編集するのはコードエディタ
さっそく教えてもらったアプリを自分のPCにインストールしてみたが、プログラミングなどやったこともなく、ソースコードエディタの使い方がわからない。これでは宝の持ち腐れならぬツールの持ち腐れである......。
その頃、文系しかいない私の部署に、エンジニアのMさんが異動してきた。プログラミングの知識が乏しいメンバーばかりだったので、異動後ほやほやで比較的時間のあったMさんに、コードエディタの使い方について勉強会を開いてもらうことになった。 せっかく開いてもらった勉強会だったが、さっぱりわからず、便利なショートカット(※4)を教えてもらっても、そもそもプログラミングがわかってないのだからピンとこないのだった。
◇ちょっと用語説明◇
※4)ショートカット
キーボードのキーを二つ同時に押すことで操作する機能。マウスを使わないので
作業効率を上げることができる
勉強会の後、早速HTMLメールを作ってみた。コードエディタは、左側にソースと呼ばれるプログラミング言語の羅列が表示され、右側に配信イメージが表示される。
ところが、私の画面では右にプレビューが表示されない。あれ???勉強会の画面と違う?
すぐにMさんに電話して質問した。
「あのう......新しくファイルを作ったのに、右側にプレビューが出ないんです。どうしてでしょう?」
「では、作成したファイルの上で右クリックして、名前を変更してください。末尾に『.html』とつけてくれますか?」
なんのことはない。ファイルの名称には拡張子(例:.html .xls .txtなど、ファイルの種類を識別するための文字列)をつけなければいけなかったのだ。
このようにMさんは本当に基本的なことから嫌な顔ひとつせず教えてくれた。
Mさんには何度も質問した。エンジニアのMさんにしたら当たり前すぎて教えるほどのことではなくても、私にとっては本当にありがたかった。Mさんも、こんなことが役に立つのならと喜んでくれた。
株式会社インソース より
テレワークにおける生産性について、在宅勤務で生産性が落ちてしまったという興味深い調査結果がありました。 今日はコロナで急激に変わった働き方について考えていきたいと思います。