一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅣ|間違いだらけのコーポレートガバナンス(15)

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ユダヤ教徒の欧州への離散

次に欧州に渡ったユダヤ教徒の足跡を追ってみたい。古代イスラエル(北イスラエル王国と南ユダ王国)のユダヤ教徒が世界に離散したきっかけは、大きく二つの出来事によるとされる。

一つは、紀元前740年頃のアッシリアによる北イスラエル王国の征服と紀元前597年頃の新バビロニアによる南ユダ王国の征服。これらの戦争により「アッシリア捕囚」「バビロン捕囚」として捕らえられたユダヤ教徒たちの一部が、のちに世界に離散したとされる。特にアッシリア捕囚となった北イスラエル王国の十氏族は規模も大きく、その行方について未だ不明な点も多い。「失われた十氏族」などといわれることもある。

そしてもう一つは、イエスの死から数十年後に起きたユダヤ戦争。ローマの属州としてその統治下にあったイスラエルのユダヤ教徒たちは、ローマに対して反乱を起こした。しかし、紀元73年頃にローマ軍はマサダ要塞を攻め落とし、ユダヤ戦争は終結する。大きくはこの二つの出来事が、ユダヤ教徒の世界離散(ディアスポラ)のきっかけとなったとされる。

エルサレムの「西の壁」。日本では「嘆きの壁」で知られる。(2018年筆者撮影)

次に、ディアスポラで欧州に離散したユダヤ教徒たちの足跡を見てみよう。

欧州に渡った彼らは、イベリア半島(現在のスペイン、ポルトガル)を中心とする南欧、そして現在のドイツを中心とする東欧において、中心的な集団を形成していく。

南欧のユダヤ教徒の子孫は今日、「スファラディ」と呼ばれる。そして東欧のユダヤ教徒の子孫は「アシュケナージ」と呼ばれる。本稿の中心は、スファラディユダヤ人、すなわちスペインのユダヤ教徒の物語となる。

スペインの都市バルセロナから西へ約100kmの所に、タラゴナという街がある。ローマ帝国下で栄えた古代都市のひとつだ。ここに紀元1~2世紀のものとされるヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語との併記碑文がある。これがスペインにおけるユダヤ教徒に関する最古の史料のひとつとされる。

ディアスポラ後に多くのユダヤ教徒がローマ帝国の主要都市に移動し、やがて定住していったことがうかがえる。その後、他の地域からの合流も増え、4世紀初頭までにスペインのユダヤ教徒のコミュニティーはかなり大きなものになったようだ。彼らはやがて経済的にも自立し、イベリア半島国家の社会において重要な存在となっていく。

(この稿つづく)

文:西澤 龍(イグナイトキャピタルパートナーズ 代表取締役)

西澤 龍 (にしざわ・りゅう)

IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー

投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員

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