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これからの日本の基幹産業は?

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3.日本初の技術、サービスを世界に

資産運用立国を目指すという日本ですが、かつては、科学技術立国を標榜していました。世界シェア5割以上を誇り、産業のコメと言われた半導体産業は衰退し、最近TOBが成立した東芝の主力事業の1つであった半導体メモリ事業は、現在も株式の一部を保有してはいるものの2018年に売却し、株式の過半数はアメリカの投資ファンドが保有しています。

半導体産業は、アメリカのNVIDIA社がAI用半導体で急成長し、時価総額で1兆ドルを超え、半導体業界では世界首位(2023年8月末時点では全業種でも世界第6位)となっています。他にも半導体業界ではアメリカにはインテルを始めとする半導体の世界企業がある他、台湾のTSMC、韓国のサムスン等があります。日本に関連するところでは、ソフトバンクグループの保有する英国アーム社が9月14日に上場して、上場時の時価総額は約7.7兆円となったものの、半導体産業での日本企業の地位は大きく下がっています。

また、1980年には世界一の生産台数を達成した日本の自動車産業ですが、韓国や中国メーカーの台頭とともに、世界での存在感は薄まって来ています。2022年度の世界全体での日本の自動車メーカー8社の世界での生産台数は約24百万台と、世界全体の自動車生産台数約85百万台の約3割を占めています。このうち、国内生産台数が約7.4百万台ですから、かつての貿易摩擦問題などもあって大半は現地生産と、空洞化が進んだ産業でもあります。

特に近年では、テスラ社に代表される電気自動車(EV)については、日本自動車メーカーは後塵を拝しており、SDG’sの文脈の中で、今後益々、内燃機関の自動車は駆逐されていく流れの中、EVで存在感を表せるかが鍵となりそうです。

このテスラ社を創業したイーロン・マスク氏ですが、他にもロケットを開発・製造するスペースX社、数万基の小型人工衛星で地球を覆うことで世界中の僻地やインターネット不通地域でのネット利用を可能にするスターリンク、脳に埋め込む装置であるブレイン・マシン・インタフェースを作ることで、人間の脳と人工知能を統合し、機械との融合を促進することを目指すニューラリンク社、新しい地下交通システムを開発するボーリング・カンパニー社、AI企業のxAI社を次々と起業し、そしてTwitter(現在はX社)を買収する等、次々と新しい技術を開発し、製品・サービスを生み出そうとしています。 

ロケット関連では、日本は次世代ロケットのH3の初号機が今年3月に打ち上げ失敗したものの、今月は従来型のH2Aロケットの47号機の打ち上げが成功し、H2Aの成功率は98%(失敗は47回中1回のみ)と高い水準にあります。今回のH2Aには月面着陸機の「SLIM」を搭載しており、来年の1~2月に月面着陸に挑むことになっています。

月面着陸では、今年4月に、日本のispace社の月面着陸機が月面着陸を試みるも失敗しており、一方で今年8月にはインドが世界で月面着陸成功の4か国目となっており、日本は「SLIM」で5か国目の月面着陸成功を目指します。

世界で時価総額が現時点で世界一位のアップル社が開発したiPhoneは、15年前は存在しませんでした。世の中に新しい製品、サービスは大量に生まれては消えて行きますが、革新的な製品には、高度な科学力や技術力の裏付けなしには成し得ません。自然科学系の論文引用数でも、日本の順位は下がって来ているということです。

資産運用立国の前提として、魅力ある投資先がなければなりませんが、それが海外企業ばかりだとすると、残念な気はしないでしょうか?

資産運用の投資先として、日本国内からも海外からもお金を呼び込むような基幹産業を日本で育てるために、やはり科学技術を磨くことが肝要なのではないかと思います。

文:花房 幸範​(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.180 2023.9.25)より転載

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