家族の間のトラブルは防ぎたい

齋藤:甲乙つけがたい存在である会社と家族の間のトラブルは何としても防ぎたいです。

小林:十分な死亡退職金を払えれば、会社と家族の問題を切り離してスムーズに解決できます。この部分については、齋藤社長の専門分野でしょうから、準備は万端だとは思いますが、もし、この準備を怠って、死亡退職金を払おうとしたり、ご家族に相続税を支払う目的で会社が貸し付けをしたりすると、会社には大きな負担となります。こうなると、オーナー経営者の不在と経営権(株式)の問題や、死亡退職金の負担が新経営陣を襲います。

また、原資がないため、死亡退職金が払えないとなったら、ご家族に大きな負担がいきます。つまり、最終的には、オーナー経営者の死による最大の焦点となるのは、「十分な死亡退職金が出せるか」なのです。

十分な死亡退職金をご家族に払えさえすれば、会社とご家族それぞれの問題を切り離して解決できるわけです。死亡退職金の原資がなければ、本来ご家族の問題である相続の影響が会社に及ぶ。それにより長年築いてきた有形、無形の財産である会社が弱体化、倒産する可能性もある。このような事態は何としても防ぐべきです。

齋藤:先生のアドバイスを活かすには、実際に何から着手すれば良いですか?

小林:万が一のことがあっても、会社や家族に迷惑をかけないためには、大きく3つのことを進めていく必要があります。

【するべきこと①】自分がいなくなった後の会社や家族の姿をイメージする。 もしものことがあった時に起こることを可能な限り、具体的に思い浮かべてください。会社の幹部が分裂して会社がバラバラにならないか。取引先が離れていかないか。会社の経営は揺るがないか。 家族に対しては、生活できるだけの収入を確保できるか。発生する問題は何か。必要なものはないか。 こういったことを一つひとつ細かくイメージすることで、亡くなった時のことがリアルになり、何をどう解決するべきかを考える第一歩となります。

【するべきこと②】ご自身の財産をどのように分けるかを決める。 会社と家族のために、自分の持っている財産をどのように分けるのが適切なのか、どのように分けたいかを考えて、それを遺言書で示しておいて下さい。その遺言書通りに財産を分割しやすいよう準備を進める必要もあります。

【するべきこと③】死亡退職金や株の買い取りの準備が出来ているかをチェックする。 オーナー経営者の場合には、自分の会社の株式をどうするかが最大の問題になります。株式の評価はどうなのか。相続税はどのくらいかかるのか。こういったことを明確にし、準備を進める必要があります。死亡退職金などを活用して、まとまった資金を準備しておけば、会社と家族の選択肢が多くなり楽になります。

齋藤:具体的な対策は自分一人では進められませんね?

小林:そうですね。先ほどあげた3つのやることのうち、【するべきこと①】の自分がいなくなった後の会社や家族の姿をイメージすることは、社長ご自身にしかできません。この部分さえ整理していただければ、後は専門家に協力を仰いで進めていくことができます。

特にワンマンの経営者や、自分に替わる人が社内にも家族にも見つからない経営者は、【するべきこと①】を面倒に感じてしまうケースが多いようです。しかし、ここを整理しないことには物事は進みません。ぜひ、ご家族のことをリアルにイメージしてみて下さい。この点については、齋藤社長の場合は社内に人材がいるようですし心配ないですね。いい機会です。早速、対策づくりを一緒に進めましょう。

齋藤:もちろんです。よろしくお願いします。今まで大事だと分かっていても、一人では何もできず放置してきたので……。肩の荷が軽くなった気がします。