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「買収先の調査で見つかる簿外負債の例」 しっかり学ぶM&A 基礎講座(21)

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現金主義の会社は要注意!未払費用や引当金など

買収対象の会社が監査法人や公認会計士の監査を受けていない場合、経費などの処理を現金主義で行っているケースが見られます。つまり、現金を支払った時点で経費などの計上を行う方法です。

しかし、事業年度末までに取引先からサービスなどが提供され、請求書も受け取っている経費であれば、その事業年度の費用として認識し、対応する負債を未払金として計上するのが合理的です。また、必ずしも請求されていなくても期間の経過とともに発生する経費であれば未払費用として計上することが考えられます。

そのほか、回収可能性が疑わしい債権に対して十分な貸倒引当金が設定されていなかったり、顧客に対して製品保証をすることが見込まれるのに製品保証引当金が計上されていなかったりする場合もあります。

時価評価が必要なデリバティブ取引

デリバティブ取引が簿外負債になっているケースも考えられます。典型的な例は、輸出入における為替リスクを避けるために為替予約をしている場合です。為替予約を始めとするデリバティブ取引では相場の変動により潜在的に損益が発生している場合、時価評価することが原則です。つまり、対象会社において評価損が発生している場合には費用計上するとともに対応する負債を認識しなければなりません。

通称で為替予約と呼ばれている取引でも、実際には通貨オプションを組み合わせた取引や通貨スワップを活用した取引で、かなり長期間の契約になっているものもあります。そうした契約では多額の評価損および簿外負債が発生している場合も考えられますので注意が必要です。

まとめに代えて~偶発債務を考慮する必要も~

以上のように、あらゆるところに隠れ負債が潜んでいますのでデューデリジェンスは必須の手続といえるでしょう。また、現時点で負債とは言えないものの、一定の場合には対象会社にとって負担となり得る偶発債務と呼ばれる事象があります。

例えば、顕在化していないものの、条件によっては請求される可能性がある残業代などの未払労働債務、取引先などに対する保証債務、係争中の事件にかかる損害賠償債務などです。こうした偶発債務の存在も買収先の評価検討には不可欠となりますので合わせてご確認いただければと思います。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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