「卸と製造の一体化でシナジーを狙う」と話す、ナシオの平社長
菓子専門卸大手の株式会社ナシオ(北海道札幌市)は、エア・ウォーター傘下の菓子・スイーツメーカー2社をグループに迎え入れた。単なる事業規模の拡大ではなく、製造機能を取り込んで川上へ進出し、卸とメーカーを一体化することで企業価値を高めるのが狙いだ。PMI(M&A後の経営統合プロセス)の考え方や今後のM&A戦略について、平元彦社長に聞いた。
-今回、2社を買収した狙いを教えてください。
もともとナシオは菓子専門卸です。今後、会社としての価値を高めていくためには、川上にある製造業と一体化することが重要だと考えました。
卸だけではなく、製造機能を持つことで、ナシオとしてできることが増えます。製造と卸を組み合わせることで、事業の幅を広げていきたいというのが大きな狙いです。
ナシオのM&Aは約32年ぶりです。前回は北海道から東京に初めて進出する際に、日配の卸メーカーを買収しました。前回はエリアを広げることが目的でしたが、今回は性格が全く異なります。
今回は、単純にエリアを広げるのではなく、川上に進出して製造機能を取り込むことで、ナシオグループとして、企業価値を高めていくことを目指しました。
-数ある菓子・スイーツメーカーのなかで、プレシア(神奈川県厚木市)とヨネザワ製菓(埼玉県三芳町)の2社を選んだ決め手は何だったのでしょうか。
シナジーを出すためには、工場の品質管理がしっかりしていることが重要です。コンビニエンスストアに商品を卸しても問題ないレベルの品質管理認証を取得していること。そして、十分な製造キャパシティを持っていることを重視しました。
大手コンビニエンスストア向けのPB(プライベートブランド)製造実績もあり、われわれが求めていた条件に合致しました。
一番気に入ったのは、やはり製品の「味」です。2社ともに本当においしい商品をつくっている会社でした。そこは絶対的な強みだと思いました。
正直、途中では「やめようかな」と思ったこともあります。それでも、味の良さを持っている会社だったので、その良さをなくしたくないと思いました。優れた商品を製造する会社であれば、将来的には絶対に伸びるだろうと考えたのです。
一方で、両社ともいいものを作る力はあるのですが、マーケティングや営業にはまだ伸ばせる余地があると感じました。つまり、商品そのものには大きな魅力がある。そこにナシオの営業力や販売力を組み合わせれば、さらに成長できるのではないかと考えました。
-PMIでは、どのようなことを重視していますか。
劇的な変化はあまり好みません。「ウチが親会社なのだから、こちらのやり方に合わせなさい」という上下関係ではなく、できるだけ平等な目線で関わりたい。こちらの社風を一方的に押し付けることも避けたいと思っています。
もちろん、変えるべきところは変えます。ただ、相手がこれまで積み重ねてきた良いところは、しっかり残したい。
実際、ヨネザワ製菓にはナシオが学ぶべきところもたくさんありました。経理や総務、工務などが長年の経験によって、少人数で非常に効率的なオペレーションをしています。
安全衛生に関する取り組みもしっかりしている。エネルギーコストについても、電力会社の切り替えや井戸水の活用など、細かな改善を積み重ねています。
工場でPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことも徹底している。会社の規模ではなく、こうした取り組みをきちんと続けていることがすごいと思います。わが社の工場でも、まだ十分にできていない部分があります。
そうしたところは、むしろわれわれが学んで取り入れていきたい。M&Aは、買った側が一方的に教えるものではありません。相手から学ぶことも非常に多いと思っています。
-具体的には、どのようなシナジーを描いていますか。
一つは日配流通の拡大です。今回取得した会社の日配商品の納品ルートを活用して、ナシオの商品を全国にもっと展開していきたい。ナシオは北海道が地盤ですから、北海道フェアなども得意です。
これまでは常温の商品が中心でしたが、今後は冷蔵商品の取り扱いも広げていきたいと考えています。物流についても、これまで各社が個別に行っていた部分を一体化していくことができます。
もう一つは工場の稼働率です。取得した会社の空いているラインを活用して、グループ商品の製造を増やす。工場の稼働率を上げることで、売上と利益を生み出していきたいと考えています。
さらに、システム面でもシナジーがあります。ナシオには自前のシステム部隊があり、これまで外部に委託していたグループ企業のシステム開発を内製化することで、コストを削減し、利益率を改善していきたい。
-今後、どのような会社をM&Aの対象にしたいですか。
やはり菓子・スイーツのメーカーですね。今回、菓子製造業をグループに迎えたことで、卸と製造を組み合わせる面白さが見えてきました。今後もメーカーとのM&Aは考えていきたいと思っています。
それとは別に、極論ですが、牧場を買ってしまうというアイデアもあります。工場が厚木にありますから、神奈川や静岡など近い地域で、自前の生乳から生クリームまで作れるようになれば面白い。
自分たちでこだわって育てた牛から取った乳を使って、プレミアムな菓子を作る。原価低減につながる可能性もありますし、一部を観光農園にすれば、ブランドの認知向上にもつながります。「ナシオ農場」のようなストーリーができれば面白いと思っています。
文・写真:糸永正行編集委員
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