九州で長年愛されているロングセラー商品「ブラックモンブラン」をはじめ、数々のアイスを生み出してきた竹下製菓株式会社(佐賀県小城市)。その舵取りを担う5代目代表取締役社長・竹下真由氏は、伝統を守りながらも、有限会社堀江製パン(佐賀県佐賀市)をグループに迎え入れるなど、M&Aを通じて地域企業の技術やノウハウを結集し、新たな挑戦と事業拡大を進めている。地域に根ざした事業運営と次世代への想いを胸に、竹下氏が描く未来とは。M&A戦略や地域への貢献などについて語っていただいた。
―御社の事業について教えてください。
竹下製菓は1927年に佐賀県で創業し、冷菓・菓子の製造販売を手がけてきました。看板商品は「ブラックモンブラン」。発売から56年経った今も、九州を中心に多くのお客様に親しまれています。祖父がヨーロッパ視察で出会ったモンブランをヒントに、チョコとバニラアイス、クッキークランチを組み合わせて商品化。発売当初から高級感あふれる商品として人気を博し、現在も売上は伸び続けています。
―他にも長く愛される商品があると伺いました。
はい。「ミルクック」はミルクセーキをイメージしたアイスで40年以上のロングセラー。「トラキチ君」もバニラアイスにチョコでトラ模様を施した商品で30年以上の歴史があります。長年培ってきた製菓技術を活かしつつ、新商品の開発も継続しています。
―今回の堀江製パンの譲り受けについて、背景を教えてください。
堀江製パンは1952年創業、佐賀県内の学校給食向けにパンや米飯を提供してきた企業。地元の子どもたちの成長を支える存在で、地域に深く根ざしています。少子化の影響もあり、給食ビジネスは厳しい環境にありますが、竹下製菓として地域経済を支える取り組みの一環として、M&Aによる譲り受けを決断しました。
―地元に根差した企業であることは重要だったのですね。
はい。業績が落ち込んだからといって諦めるのではなく、地域の未来や子どもたちのために最後まで頑張れる企業と手を組むことに意味があると考えました。堀江製パンの社員の皆さんも、仕事に誇りを持ち取り組まれていることが印象的でした。さらに、堀江製パンとの統合により、給食事業のノウハウと竹下製菓の販売力を組み合わせることで、新たな販路開拓や売上増加が期待できる点も大きな魅力でした。グループ全体として取り組めることを考え、新たな柱を育てていきたいです。
―M&Aを進める上で大切にしていることは何ですか?
企業文化や風土です。一緒に事業を進める際に、働く人たちが違和感なく取り組めるかどうかは重要です。前オーナーと話す中で、会社の方向性や理念に大きなずれがないかを確認し、文化を推し測っています。
―PMI(統合プロセス)で重視していることは?
企業の良さや社員の誇りを絶対に失わせないことです。同時に効率化できる部分は共通化してグループ全体で整理し、組織作りを進めます。M&Aは企業同士のパートナーシップであり、竹下製菓のM&A戦略は、地域企業との共創による価値向上に加え、事業規模の拡大や売上向上も視野に入れた成長戦略として設計されています。お互いの強みを尊重しながら高め合うことが最も重要です。最近は外部の技術を取り入れ、自社の強みと組み合わせることで、お客様に求められる商品を生み出すことを重視しています。
―佐賀県への貢献についてはいかがですか?
働きたくなる職場、誇りを持てる職場を地域に提供していきたいです。ブラックモンブランを全国に発信することで佐賀の魅力を伝え、地域に誇りを感じてもらうことも目指しています。また、地元食材と組み合わせた商品開発を通じ、地域農産物の売上向上にも貢献したいです。
―今後のM&A構想はありますか?
具体的な企業は決まっていませんが、共に楽しい商品を作れる会社との出会いを大切にしています。都市部だけでなく地域に根差した企業とも手を組み、良い技術や商品を消さずに育てていくことが目的です。M&Aは企業の技術力や販売力を強化する手段であり、地域と共に成長するための戦略の一つだと考えています。
経営者にとって事業承継は避けて通れない課題です。社内後継者や外部経営者への承継が難しい場合、M&Aは早めに検討すべき選択肢であり、企業同士が手を組むことでより良い結果を生むことが可能だと思います。
―最後に、今後の竹下製菓の展望をお聞かせください。
竹下製菓は「人を幸せにする会社」であり続けたいです。お客様、社員、取引先、すべての人を幸せにすること、そして次世代にもその価値をつなぐこと。5代にわたり受け継いできた技術と想いを絶やさず、地域と共に成長し続けていきたいです。