メガバンクといえば、多くの人が長時間労働をイメージするかもしれない。確かに数年前までは長時間労働が当たり前だった。特に本部勤務の行員に関しては、日付が変わるまで働いている人も珍しくなかった。しかし、ここ数年の働き方改革の影響は、確実にメガバンクにも及んでいる。
今回は、現在のメガバンクの労働環境について説明したい。特に個人の顧客を相手にするリテール部門の労働環境について述べたい。
現役行員の何人かにインタビューをしたが、個人顧客を相手にするリテール部門については朝8時に出勤して午後7時ごろ退店するのが通常のようだ。以前は朝7時に出勤をして、午後10時の退店が普通だったので、かなり時間が短縮されているように見える。
休みについても年間20日程度の有給休暇を取得しなければならなくなっていると聞く。こちらについても以前に比べ5日程度増えている印象だ。
ただ、悩ましいのは休みの日。営業担当者にはスマートフォンが支給されている。スマホは、休みの日は支店に置いておくこともできるが、ほとんどの担当者は持ち帰っているのが実情。
つまり、顧客から休みの日に電話がかかってくることなどは日常茶飯事となっている。多くの行員は休日でも顧客対応に追われているのだ。
また、意地の悪い支店長や課長の下で働くと休みの日にわざときついメールを送られたり電話がかかってくるケースもあるようだ。
一見すると労働環境が改善されているように見えても、実際は必ずしもそうではないのが現状といえるだろう。
見た目の労働時間に関しては、確かに短くなっているのだが、営業担当者の目標は年々高くなっている。首都圏の支店の筆頭の担当者であれば、投資信託や保険などの金融商品を純増で、毎月3億円程度増やさなければいけない。
純増での3億円というのは、個人の金融商品の営業をやっている人であればわかると思うが、かなり厳しいハードルだ。なぜなら他の金融商品を解約して、新たに金融商品の申し込みをしてもらってもカウントされないからだ。
あくまで預貯金から新たに金融商品に申し込みをしてもらう必要がある。
これを毎月3億円、年間36億円を1人でやらなければいけないのはかなり厳しいと思われるのではないだろうか。しかし、これだけ販売をしても、リテール部門の収益がジリ貧だ。なぜなら手数料率が年々下がっているからだ。今後もこの傾向は続いていくだろう。
今回は、メガバンクの労働環境について、リテール部門を中心に述べた。メガバンクの労働環境は、世の中の流れに合わせて労働時間や休みは改善されつつある。
しかし実態としては休みの日も仕事をしている営業担当者がほとんどであることを踏まえると、決して良い方向に進んでいるとは思えない。また、目標も年々高くなり精神的な苦痛を感じている担当者も多いに違いない。
文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)
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