メガバンクのリテール収益が厳しいといわれ、10年以上経つ。多くの銀行では、リテール部門を縮小しているが、今後大きく反転攻勢を行う可能性がある。その大きなカギを「預金」が握っていることを皆さんはご存知だろうか。
そこで今回は、メガバンクが預金集めをする理由について説明する。
2023年7月28日に日本銀行で行われた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用の柔軟化を決めたのを知っている方は多いだろう。一般の方から見ると、大きな変わりはないと思っている方も多いのではないだろうか。
しかし、金利の上限を撤廃したことには大きな意味を持つ。なぜなら、預金の金利が上がり、銀行が預金で利益を上げられるようになる可能性があるからだ。
<預金の金利が上がる=ローンの金利が上がる>
預金の金利が上がるのを喜んでいる方も多いかもしれないが、預金の金利が上がるということは、ローンの金利も上がるといったことだ。
住宅ローンやカードローンの金利が今後大きく上がる可能性があり、銀行としては金利が高ければ高いほど利ざやを大きく抜けるため、預金を集めることによって利益を上げられる可能性が高くなる。
メガバンクのリテール部門は、投資信託や保険の販売などで収益を得ている部門だ。預金は金利が低く、利ざやが抜けないことから、全く評価されない時代が何年も続いていた。
しかし、今回の日銀の政策金利決定の変更に伴って、多くの銀行が預金集めに走る可能性が高い。
すでに、あるメガバンクでは他行撤退キャンペーンなどを行い、積極的に預金を集めに入っているのだ。預金で儲かればリテール部門としてはこれだけ助かることはない。なぜなら、投資信託や預金などを販売するのは非常に時間がかかり、ある程度営業員の力も必要になるからだ。
しかし預金であれば誰でも比較的簡単に集められる。しかも値動きがないため、お願い営業も可能になるため、非常に効率的に収益を得ることができるとして注目されているのだ。
メガバンクに関しては、潤沢な預金残高があり、さらにペイオフ(金融機関が破綻した場合、預金保険制度によって預金者1人あたり元金1000万円までと利息が保証)の問題もあることから、今後預金を集めるのも比較的容易なはずだ。
しかし地方銀行や信用金庫については昨今叫ばれている経営問題を知っている方も多いため、なかなか簡単に預金を集められないだろう。
そうすると、収益を上げることがより難しくなり、今後経営が苦しくなる地方銀行や信用金庫はたくさん出てくるはずだ。ペイオフが発動される可能性も現実味を帯びているため、今後はより慎重に取引する銀行を選ぶべきだろう。
今回は、メガバンクが預金集めを始める理由について説明した。預金で儲かる時代が来ればメガバンクの経営はかなり安定する。メガバンクは斜陽産業といわれているが、今後大きく収益を伸ばす可能性がある。ぜひ注目をして見ていて欲しい。
文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)
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