メガバンクで個人顧客を相手にする資産運用部門で収益が取りづらくなって5年以上経つが、その傾向は今も変わりない。固定費が高い支店をどんどん削減し、営業員を減らしているのが現状だ。
しかし、一筋の望みもある。それはメガバンクならではのグループの証券会社と信託銀行とタッグを組んで資産運用部門に力を入れる可能性があることだ。
そこで今回は、超富裕層のみをターゲットとしたグループの証券会社と信託銀行とタッグを組んでいる取り組みについて説明したい。
メガバンクは、グループ内に証券会社と信託銀行を保有している。
証券会社は、メガバンクとは違い、より専門的な金融商品の取り扱いがあるため、富裕層と呼ばれる人たちのほとんどが利用しているのは皆さんご存知だろう。また、信託銀行については相続に強みがあり、こちらも多くの富裕層が顧客に抱える。
富裕層に強みを持つ2つの業態を持っているのはメガバンクの強みといえる。
今後、メガバンクの資産運用部門は証券、信託の業態と連携を深め、グループ一体となって対応していく可能性が高い。メガバンクの強みである豊富な顧客データを使って、証券会社や信託銀行を紹介し、富裕層をしっかり囲い込もうというわけだ。
富裕層から見ると、1つのメガバンクグループでお金を増やすニーズや相続のニーズを満たすことができるため大きなメリットになる。
メガバンクサイドから見ても、証券会社と信託銀行と一緒に行動をすることによって、支店の数を減らすことができ、管理職の数も少なくできるようになる。
というのも、さほどの資産を持たない一般顧客層を相手にする資産運用から撤退することになるからだ。一方、富裕層は各地域に一定の数しかいない。つまり拠点をたくさん持たなくても、1つの拠点に管理職や担当者を集中させることによって充分対応ができる。
そして、一般顧客層については、ネット証券などでの運用に誘導することになるだろう。
このような方向になると、銀行の資産運用部門で働くのは非常に楽しいかもしれない。なぜなら、あらゆる商品やネットワークの利用ができ、富裕層のニーズを満たすことができるからだ。富裕層から得られる収益が非常に大きいため、銀行の収益改善にもつながるだろう。
まだまだ道半ばであるが、今後銀行の資産運用部門が生き残るためには、このような方向に進むしかないと個人的には考える。
今回は、メガバンクのリテール部門の資産運用部門が生き残るための方策について説明した。メガバンクのリテール部門の花形は資産運用部門ではあるが、なかなか収益が取れない部門になりつつある。
今後、収益を改善し、生き残っていくためには、グループ一丸となって、超富裕層に対応する方向に行かざるを得ないだろう。
文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)
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