トップ > インタビュー・事例 > M&A事例 >【M&Aをきっかけに、より強いチームを創る】組織融合の変遷で生まれたユナイテッド早川氏が語る“M&Aのホントのところ”─ユナイテッド株式会社 代表取締役会長CEO 早川 与規

【M&Aをきっかけに、より強いチームを創る】組織融合の変遷で生まれたユナイテッド早川氏が語る“M&Aのホントのところ”─ユナイテッド株式会社 代表取締役会長CEO 早川 与規

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
ユナイテッド株式会社 代表取締役会長CEO 早川 与規氏

予見できない痛み

片岡

 M&Aで苦労したところや失敗したところはありますか?

早川

 これもやはり「人」です。経営者として2回合併を経験している中で、組織同士が融合しなかったということはなく、全体感として融合して目的を遂げ、事業を伸ばすことができました。

 ただ各論で見ると、「こういう意図で合併をするんだよ」と伝えても、現場レベルで行くとポストがなくなってしまうのではないかという誤解や、どうしても心情的に合併は受け入れがたいということが出てきてしまいます。非常に期待していて、まさにこれから機会やチャンスを提供しようというような20代の若手が辞めてしまうということがどうしても起きてしまいます。それがなかなかつらいことですね。

片岡

 特に期待していたメンバーの離職は非常につらいところだと思います。それは何度か経験されて、予見できるような構造なのでしょうか?

早川

 予見できる場合もあるんですけど、数名は予見できない人が必ず出てきます。その辺はきついです。もちろん本人も葛藤があるだと思うんですけど。どんなときに起きやすいかというと、両社とも同じ事業をやってました、というときです。合併する2社の事業部をひとつにすると、その時点での自分のミッションに納得できないとか、文化が違うといったことが出てきます。そうすると当事者は合併のタイミングでそう言ったことにエネルギーを使うのならば、外に活躍の場を求めたいと思うきっかけになってしまう。実際に組織が融合してしまえばそのようなストレスはなくなるのですが。

コア人材獲得としてのM&A

片岡

 早川さんにとって、M&Aが果たした役割は何でしょうか?

早川

 M&Aの役割としては、基本的に突き詰めると優秀な人材を一気に大量に採用できるということに近いかなと思っています。特に一つ一つのインターネット事業はいつなくなるかわからない、いつ終わるかわからないところなので、一番重要なのは「人」ですね。ですから、M&Aによって、一気に何十人何百人というような優秀な人材の中途採用ができるという捉え方ができるのではないかと思います。実際には中途採用というよりは、一旦原点に立ち返って、ゼロから一緒にチームを創るということに近いです。

 例えば、今ユナイテッドになって、特に良かったことで感じるのは上場企業の経営をやっていた2社の経営陣同士で議論できることです。明らかに1社でやっていた時よりも議論のレベルも上がりました。例えば、私も社長の金子も上場企業のトップをやっていたというところでいくと、2人で話すことで意思決定の精度とか判断に関する確信度合いとかが変わってくるので、それは非常によかったかなと。

片岡

 ユナイテッドさんでは、M&Aによって仲間入りしてくれた人間を、コア人材としてグループ間異動させているというお話を聞きました。効果のほどは?

早川

 あります。どうしてもベンチャーというのは、事業が人に紐づいてしまうところがあると思います。もちろん良い面もあるのですが、「この事業はこの人しかできなくて、その下にはマネージャーのこの人がいて」ってなってしまうと、どうしても伸びが弱くなってしまう側面があります。癖が付いてしまうというか。

 また、優秀な若手が入社したときに、幹部も若いと、この体制で20年くらい行っちゃうの?となるとよくないので、タイミングを見て担務変更をしています。結果的にプラスに活性化しています。ただ、これは決して機械的に異動をするわけではなく、必要に応じてケースバイケースで行います。

片岡

 上場している企業がM&Aする際は、特にビジョンや戦略に紐づいた買収が問われると思います。ユナイテッドさんでいうとアドテクとスマホアプリという印象が非常に強いんですが、今年M&Aされたキラメックスさんはオンラインのプログラミング教育です。エドテックと言われる領域ですね。アドテク・スマホアプリとは距離があるというか、いろいろ「おやっ?」と思われた方も多かったと思うんですが。

早川

 まずはエドテックという領域というのはそもそもマーケットがどんどん伸びていくので、事業として伸びしろがあります。というのと、先程お話しした事業のポートフォリオを増やしていこうという視点です。仰っていただいたアドテクとスマホアプリが事業の柱となっているんですが、3つ目4つ目をどんどんつくる準備というのは、実際2~3年かかります。ならば先手を打とうじゃないかと。

 かつ、キラメックス社長の村田はもともと楽天出身で、その後、自分で起業しており、若くて優秀な経営者です。ビジョンが合えば、ユナイテッドグループの中でも将来いろいろ重責を担ってくれるんじゃないかな、というそんな視点も含めて決めました。経営者の人柄は非常に重要だと思います。

質疑応答(参加者からの質問)

 いままでのM&Aで、これは失敗だった、もしくはヤバかったという例があれば、教えてください。

早川

 やばいな、というのはあんまりないです。どうしてもDDを実施する時には、相手の会社の一番いい状態のモノを見せてくれていると思っていますので、期待値をあまり上げすぎないようにしています。「これがMAXでここからいろんなことが起きるだろう」という前提で見ています。

 また、DDやっているので当たり前ですが、あまりにもヤバイとか、M&A後に全員辞めちゃったとか、架空の売り上げがあったとか、さすがにそんなことはないです。今まででいくと、先ほどもお話しした通り、将来有望なコアな人が何人か辞めてしまうということが一番つらいところです。

これからも積極的に

片岡

 今後もM&Aは積極的に展開されていきますか?

早川

 はい。ユナイテッドはこれからもどんどんM&Aをやります。ノウハウもだんだん蓄積されてきています。今まで経験してきたような失敗から学び、よりうまくできるんじゃないかなという風に思っています。特にインターネット業界は同じようなことやっている会社って結構あるので、一緒にやった方が明らかにいいこともある。ただ、ベースは我々のビジョン「日本を代表するインターネット企業になる」、ミッション「挑戦の連続により新しい価値を生み出し、社会に貢献する」というようなことを握れて一緒にできるということが前提になりますけど、一緒にやってくれる仲間については、常に探しています。

 一方でM&A頼みになっているわけではなくて、もちろん自社での事業立ち上げもしっかりやっています。両軸でやっていきます。どんどん変わる業界の中でM&Aをひとつの有効な成長の手段として使っていきたいと思っています。ぜひ何かございましたらご一報お待ちしております。

本記事は「INOUZ Times」から提供を受けております。
https://inouz.jp/times

【関連記事を読む】

【「M&Aは男気が大事なんです。」】過去16件のM&Aを実施してきた小笹氏が語る“M&Aのホントのところ”─ 株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹 芳央

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5