日本認証サービス(以下、JCS)は、主に食品分析やJAS 法に基づく法制認定業務を行っていたが、欧米とは勝手の異なる日本市場の開拓には苦戦。事業継続の可否を検討する中で、取引金融機関企業譲渡を相談し、買収先の探索をM&Aの専門家に相談して、2011年12月に株式譲渡契約が締結された。今回は、JCSでM&Aを担当されたスミス前・社長と本件に携わった金融機関様にM&Aの経緯を伺った。

会社の譲渡を真剣に考えたとき、
相談したのは金融機関の担当者だった

御社のご創業からの沿革を教えてください。

スミス前・社長:JCSは米国法人Trans Global Alliances ID Inc. の100%日本法人として創業しました。弊社が分析した食品分析結果がテレビ番組に取り上げられるなど、今後の事業展開次第では、大きな成長を期待できるビジネス環境にありました。

しかし、ヨーロッパやアメリカでは強いニーズがある私たちの得意技術が、日本市場では浸透していなかったこと、デフレ下でメーカーのコスト削減意識が強まっていたことなどから、非常に苦戦を強いられました。大きな設備投資は難しいし、堅実な安定成長も見込めない。ではどうしようかと考えていたそんな折に、ある会社から買収のオファーがあったのです。そのお話は結果的に破談になってしまったのですが、その際に“日本で独自にがんばるのも手だが、譲渡するのも手だ”と考えるようになりました。

このような経緯で本格的に企業譲渡を検討することになり、取引金融機関に相談したのです。

金融機関は顧客の課題解決が第一。
自前で何とかするだけでなく、必要ならば外部企業にも協力を求める

金融機関が相談を受けてからの経緯を教えてください。

金融機関:JCSさんからご相談があったことは、支店の担当者からすぐ私たちに伝達されました。ご意向をお伺いし、当初は自金庫の取引先にお声掛けしようかと考えました。ただ、親会社がグローバル展開している海外の企業ということもあり、自金庫内だけでは賄いきれない不安を感じましたので、かなり早いタイミングでM&Aの専門家に声をかけました。

相談することに不安は感じましたか?

スミス前・社長:多少の不安はありました。私たちの業界は狭いので、企業を譲渡する意思があるなんてことが漏れると取引停止につながってしまいますからね。しかし、メインバンクならば、決して私たちに不利な対応はしないだろうと信頼して相談しました。 

あらかじめ弊社の事業内容をよく理解してくださっていた金融機関さんだからこそ、スピーディーに話を進めてくださったのだと思います。また、金融機関さん経由でM&Aの専門家をご紹介いただいたので、相談に入りやすかったです。

譲渡を考え始めたころはデメリットばかり考えていたが、
買収され安定した今、挑戦できる機運が湧いてきている

M&Aの専門家の印象はいかがでしたか?

スミス前・社長:約1カ月以内に4 社と、短い期間にいろいろな会社に会わせてくれた点が非常に良かったです。ミーティングを設け、相手企業の社長や副社長と話し合いをする機会を作ってくれました。これは自分たちではなかなかできません。

また、フランスのビューローベリタスというグローバル展開する大会社をご紹介いただいたのには驚きました。実際に面談した際は、こんな大きな企業がなぜ当社に興味を持ったのだろうと疑問を持ったくらいです。

お相手のビューローベリタスの印象を教えてください。

スミス前・社長:ビューローベリタスには食品検査部門がなかったとのことで、私たちの技術や社員をとても大切に扱ってくださっています。また、既存の取引先や外国での強い販売力がありますので、JCSのビジネスを拡大してくれるイメージを持てています。

社員も、特に若手のメンバーは、非常に喜んでいます。会社が不安定で先行きが見えない状況から、安定感があり挑戦できる環境へと変わったのですから……。

M&Aを考え始めた当初は、買収されたら良い事業や顧客は取り込まれ、社員は転籍し、不要な事業は解体されてバラバラになるのではないか。そのような不安もあったのですが……。今回の買収先がビューローベリタスで本当に良かったと実感しています。

本日は誠にありがとうございました。

M&A情報誌「SMART」より、2012年7月号の記事を基に再構成
編集:M&A Online編集部