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【現場の声】創業者が語る。息子に会社を継承できなくなった場合

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旭工業 創業者 今井三郎氏

 旭工業(東京都青梅市)は、全自動リフト式蒸気熱殺菌冷却装置を主力製品とする中堅の食品製造機械メーカーで、国内食品メーカーを主な顧客に安定した売り上げを確保してきた。しかし、創業者が勇退することになり、事業の存続や従業員の雇用、将来の発展のためにM&Aを希望。M&Aの専門家と地元金融機関と共同で支援し、事業承継型M&Aの成立に至った。今回は、同社創業者である今井三郎会長に、勇退やM&Aの経緯についてお話を伺った。

事業承継が困難になり、「何のためにこれから先も仕事を続けるのか」を考えた

御社のご創業からの沿革を教えてください。

 もともとは音楽を志して勉強していましたが、終戦後は生活が苦しく、子供の頃から手先が器用だったこともあって機械製造の道に入りました。その後、今の会社を創業したのは昭和37 年。「太陽が昇るように大きくなってほしい」との思いを込めて、旭工業と名付けました。

 自分で言うのも何ですが、私は生まれながらの技術者と申しますか……。前例のないものでも、要望に応える機械を作り上げることが得意でした。当初は大手ベッドメーカーから委託を受け、工場で使う小さなミシンの自動機を製造していましたが、いろいろな要望に対応しているうち段々と注文が舞い込んで、やがて日本全国のベッドメーカーから引き合いをいただけるようになりました。

 その後、今度は製麺組合から焼きそばを作る自動製麺機を作れないか、という話がまいりまして。それがきっかけとなって、現在の主力製品である蒸気熱殺菌装置へとつながり、食品製造機械メーカーとしての歴史を歩むこととなりました。おかげさまで「技術のアサヒ」としてご愛顧いただき、今では韓国や台湾、中国からもお声かけいただけるようになっています。

引退と事業承継を考えられた経緯は?

 だいぶ前から事業承継のことは考えており、当初は息子に会社を継いでもらおうと考えておりました。しかし、息子が病気になり、承継させたくてもできなくなってしまったのです。そこで、ふと考えたのです。「もうすぐ自分も85 歳になる。食べるに困るわけでもなく、事業承継が困難になった今、何のためにこれから先も仕事を続けるのか」と……。もっと自分が若ければ、まだ頑張っていたと思います。ただ、年齢や会社の将来のことも考え、意識して決心したのが今回でした。

我が人生に悔いなし。M&A後は趣味を楽しむ毎日を送る

M&A はどのように進められたのでしょうか?

 地元金融機関の担当者には、以前から「将来、会社を譲渡することになったら相手を探してもらえないか」と伝えていましたが、M&A を本格的に考えるようになりM&Aの専門家を紹介されました。数社のお相手をご提案いただき、その中から一番良いお相手を選んで成約に至りました。しっかりした上場企業で、引き継いでもらって本当に良かったと感じています。引き継ぎも滞りなく済ませることができました。社員たちも新しい経営者の下、安心して働いてくれていると思います。今は「我が人生に悔いなし」という気持ちでいっぱいです。

現在のお仕事や生活は?

 会長という立場にありますが、会社にはほとんど行っていません。多くの中堅・中小企業の創業者がそうであるように、私もワンマンな強い力で会社を仕切ってきました。ですが、今は現・社長が会社を仕切ってくれているので、今さら私が横から口出しすべきではありません。何かあれば助力は惜しみませんが、けじめはつけたいと考えています。

 会社に行かなくなっても、寂しく感じることはありません。少しのんびりしながら日課の散歩をし、夜は晩酌を楽しむ。自宅の庭造りも考えなければならないし、他にも趣味があって、今も暇のない毎日を過ごしています。

本日は誠にありがとうございました。

M&A情報誌「SMART」より、 2012年4月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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