海外事業の主戦場と位置付けるのが東南アジアだ。1988年にタイ戸田建設(バンコク)を設立し、日系進出企業向けを中心に工場、倉庫などの建設工事に乗り出した。
ベトナムでは1993年にハノイ駐在員事務所をスタートした後、2009年に100%出資のベトナム戸田建設(ホーチミン)を設立。なかでも政府開発援助(ODA)関連の病院、学校の建設工事で高い評価を得たという。
現行の中期計画がスタートした2022年8月には、インドネシアの中堅ゼネコンであるタタムリア・ヌサンタラ・インダ(TATA、ジャカルタ市)に追加出資して子会社化した。約40%だった持ち株比率を67%に引き上げた。取得金額は非公表。2020年10月にTATAの第三者割当増資を引き受け、持ち分法適用関連会社としていた。
こうした中、昨年8月、シンガポールに設立したのが地域統括会社「トダ・アジアパシフィック」だ。東南アジアへの日系企業の進出支援に力を入れるほか、タイ、ベトナムでは日系企業の工事にとどまらず、現地企業からの受注拡大を促進する。オセアニアでは事業基盤の確保を最優先としており、その手始めがニュージーランドで昨年末に手がけたホテル運営会社の買収だった。
1972年に進出から50年余となる米国では現在、不動産事業に特化してカリフォルニア州でビジネスを展開している。
再エネの取り組みはどうか。ターゲットは国内、海外ともに風力発電事業。ブラジルでは陸上風力発電を展開しているが、国内では洋上風力発電を推進中だ。
その舞台は長崎県五島列島。子会社の五島フローティングウィンドファーム(五島市)を事業主体とし、五島市沖で浮体式の洋上風力発電所の建設が進行している。出力2100キロワットの風車を8基を浮かべる計画で、1つの風車は海中に沈んだ部分を含めて全長176.5メートルに及ぶ。
運転開始は2024年1月を予定していたが、浮体構造部に不具合が見つかり、2024年1月から2026年1月に延期された。ゼネコン各社にとって風力発電事業は注力分野の一つで、どう巻き返すのか注目される。
実は、大黒柱の建設事業でもM&Aを仕掛けた。2021年に茨城県の地場大手、昭和建設(水戸市)を傘下に収めた。これに先駆け、2018年には福島県最大手の佐藤工業(福島市)を子会社化。元請けレベルでの地域間連携にも積極的に取り組んできた。
戸田建設は1881(明治14)年に創業し、140年を超える歴史を持つ。とりわけ大学、病院や官庁関連の工事で名をはせてきた。今秋、東京・京橋に完成する新本社ビル「TODA BUILDING」(地上28階)は同社の技術を結集し、世界最高水準の耐震性能や環境性能を盛り込み、先進技術のショールーム機能を併せ持つ。新本社を足場に、次の飛躍を期すことになりそうだ。
◎戸田建設の沿革
年 | 主な出来事 |
1881年 | 初代戸田利兵衛が土木建築請負業を開業 |
1908年 | 戸田方から戸田組に名称変更 |
1936年 | 株式会社に改組し、戸田組を設立 |
1963年 | 戸田道路を設立 |
〃 | 戸田建設に社名変更 |
1969年 | 東証2部上場 |
1971年 | 東証1部上場 |
1972年 | ブラジルに「ブラジル戸田建設」を設立 |
〃 | 米国に「アメリカ戸田建設」を設立 |
1987年 | 島藤建設(東証2部)と合併 |
2018年 | 地場建設会社の佐藤工業(福島市)を子会社化 |
2020年 | ブラジルに投資事業子会社「戸田インベストメント・ブラジル」を設立 |
2021年 | 地場建設会社の昭和建設(水戸市)を子会社化 |
2022年 | 東証プライム上場に移行 |
〃 | インドネシアの建設会社「タタムリア・ヌサンタラ・インダ」を子会社化 |
〃 | 戸田道路(東京都中央区)を完全子会社化 |
〃 | 戸田ビルパートナーズ(東京都江東区)を完全子会社化 |
2023年 | ブラジル戸田建設(サンパウロ市)を現地投資会社に譲渡 |
〃 | アジア太平洋地域統括会社「トダ・アジアパシフィック」をシンガポールに設立 |
〃 | 五島市沖洋上風力発電事業の開始時期を2026年1月に延期すると発表 |
〃 | ブラジルで陸上風力発電事業の2社を子会社化 |
2024年 | ニュージーランドのホテル運営会社「コヒーレント・ホテル」を子会社化へ |
〃 | 新本社ビル「TODA BUIDING」が秋にオープン |
文:M&A Online
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