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メルカリが語る、M&A戦略とビジネス開発の未来 - スタートアップとの連携で非連続な成長へ

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2025年3月19日、ストライク主催の「第38回 Conference of S Venture Lab.」がTokyo Venture Capital Hubにて開催された。メルカリ 経営戦略室/コーポレートディベロップメントの牟田吉昌氏をゲストに迎え、「メルカリが語る、ビジネス開発の今後とM&A戦略の描き方」と題したトークセッションは、スタートアップと事業会社の連携を促進する場として、活発な議論が交わされた。

メルカリ 経営戦略室 コーポレートディベロップメントの牟田吉昌氏
メルカリ 経営戦略室 コーポレートディベロップメントの牟田吉昌氏

メルカリのM&A戦略 - 非連続な成長を求めて

トークセッションでは、まず牟田氏の経歴から説明があった。リクルートホールディングスで決済事業「AirPAY」に携わった後、エンプロイーサクセス事業を行うwelldayを設立し、HRbrain(東京都港区)へM&Aによって譲渡。2024年4月よりメルカリに入社し、現在はメルカリの経営戦略室/コーポレートディベロップメントとして、M&A事業を統括する。牟田氏は「バイサイドとソールドサイド両方の経験から得られる知見を共有したい」と語った。

内製からM&Aへメルカリの変化

メルカリはフリマアプリを祖業とし、年間GMV(流通取引総額)10.3兆円、2300万人の月間アクティブユーザー(MAU)を抱える巨大プラットフォームへと成長。メルペイ、メルカリ ハロ、メルカリNFTなど、新規事業の多くを内製化で進めてきた。

しかし、牟田氏は「ここ3〜5年はメルカリ単体の成長を追求してきたが、非連続な成長に頭打ち感がある」と現状を分析。その背景として「新規開発のインパクトが小さくなっている」ことを挙げ、M&Aを本格的に検討するに至った経緯を説明した。

顧客体験の向上と安心安全の追求 - M&A戦略の優先順位

メルカリがM&A戦略で重視するのは「顧客体験への回帰」だ。2024年に発生した返品トラブルなどを例に、高額商品の取引における安心安全の確保、真贋鑑定機能の強化、良質な商品の在庫確保を課題として挙げた。

牟田氏は「ピンチはチャンスと捉えたい。メルカリで10万円のバッグを買う人がいるのは、ユーザーがより良いものを求めているニーズの現れ」と語り、安全安心な取引環境を整えるため、まずは国内に集中する考えを示した。

高額商品の循環的な取引を促進するため、M&Aを通じてブランド品の在庫を増やしたり、真贋鑑定機能を強化することを検討しているという。

メルカリの事業成長戦略
メルカリの事業成長戦略について話す牟田氏(右)とモデレーターのストライク舩津朗氏

M&Aの判断基準:「バイ」か「ビルド」か

メルカリでは、事業部門と経営企画室が常に情報共有を行い、連携を密にしている。新規事業を始める際、事業部門はまず「自社で作った方がいい」と考える傾向にあるという。一方、経営企画部門もむやみに「買った方がいい」とは言わず、「作った方がいい」と提案することもあるという。

新規事業立ち上げにおいて、内製化(ビルド)ではなく外部資本との提携(バイ)を選ぶ基準として、牟田氏はまず「パートナーシップ(業務提携)を検討する」と語る。その上で、「バイ」と「ビルド」の選択においては、以下の点を考慮するという。

  • 既存顧客の獲得: 新規顧客獲得のスケールを一気に拡大できるか
  • 競合との比較: 競合に後れを取っている分野を補強できるか
  • カテゴリーの強化: ファッションやグッズなど特定のカテゴリーを強化できるか
  • 新たなトピック: AIなど、自社にない技術や人材を獲得できるか

メルカリの新規事業の原動力とは

メルカリが新規事業を次々と立ち上げられる原動力について、牟田氏は「起業家出身者、しかもホームランバッターが揃っていること」を挙げた。良い案件がないときは、スキルがあるのに活かせていない人材が待機し、良い案件があれば自らホームランを打ちに行く。その仕組みができているのが、メルカリの強みだと分析した。

起業家としてのM&A経験 - ポジティブな選択

イベントでは、牟田氏自身の起業家としての経歴と、M&Aに対する考え方についても触れられた。

牟田氏は、自身が創業したwelldayをHRbrainにM&Aで譲渡した経験について、「結論から言うとリップサービスではなくて僕は良かったと思う」と語った。

その理由として、牟田氏は、M&Aによって事業が継続し、かかわった従業員が各方面で活躍し、ハッピーになっていることを挙げた。また、M&Aは、事業をより大きなインパクトに繋げるための手段であるという考えを示した。

イグジット(出口戦略)の手段としてIPO(新規株式上場)とM&Aの選択については「M&Aが、IPOに必ずしも劣後するとは思わない。継続的な成長見込めないときにIPOよりもM&Aの方がスマートな手段となる。M&Aは事業を成長させるための一手段であり、過小評価されている」と述べた。
M&Aを成功させるために重要なこととして、牟田氏は「相互理解」を強調した。M&A候補先の考えを深く理解し、最適な提案をすることが重要だと語った。

 メルカリが求める人材 - メルカリへの愛

最後に、牟田氏は「どんな社長さんと一緒にM&Aをしたいか」という問いに対し、「メルカリが好きであることが重要」と答えた。「M&Aはロジカルな世界だが、好きじゃない会社で働くことほど辛いことはない」と述べ、メルカリへの愛を持つ人材との協業に期待を寄せた。「メルカリと一緒にやれることができそうとかあれば、とにかくドアを開けて話伺いたいなと思ってます」と述べ、参加者にメッセージを送った。

第38回 Conference of S Venture Lab.登壇者集合写真
第38回 Conference of S Venture Lab.登壇者集合写真

スタートアップピッチも開催

イベントの第2部では、スタートアップ企業によるピッチが行われた。工場などで使用される測定器をはじめとする精密機器等を事業者間で直接売買できるB2Bオンラインマーケットプレイスを運営するEkuipp代表取締役 松本 悠利 氏と、クラウド型法人カーど「paild」など法人向け決済サービスの開発・運営を行うペイルド執行役員コーポレート本部長 和田 美奈子氏が登壇し、自社のビジネスモデルについて熱いプレゼンテーションを行った。

イベント概要

日時:2025年3月19日(水)  18:30-20:30

会 場:Zoom / Tokyo Venture Capital Hub

(東京都港区虎ノ門 5 丁目 9 番 1 号 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ B, 5 階)

主 催:S venture Lab.(株式会社ストライク)

後 援:森ビル株式会社

協 力: 特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ、株式会社Kips

次回以降の情報はコチラ

https://www.sventurelab.com/


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