背景には北朝鮮との安全保障上の問題や「中国脅威論」の高まりに伴い、「敵の敵は味方」との意識から対日感情が好転したとの見方がある。だが、こうした「地政学上のリスク」に対する懸念であれば、これまでも同様にあった。対日世論が変化した背景には、別の理由があるはずだ。
それは日韓経済の逆転現象だ。経済協力開発機構(OECD)による購買力平価ベースの平均賃金調査で、2015年に韓国は日本を上回った。2019年には1人当たり購買力平価GDP(国内総生産)でも日本を追い抜いている。日本経済研究センターによると、2020年時点では日本が韓国を上回っていた1人当たり名目GDPにおいても、2027年には韓国が逆転する可能性があるという。
こうした経済的な優位性が、韓国の「対日コンプレックス」を薄めている可能性が大きい。6日に元徴用工問題で韓国側が賠償を肩代わりすると発表した韓国外務省も「韓国の高まった国力にふさわしい決断」と、自国経済の成長が後押しになったことを認めた。日本でも太平洋戦争の敗戦に伴う「対米コンプレックス」を、高度成長期からバブル期にかけての経済成長で払拭(ふっしょく)した歴史がある。
韓国にとって日本は第3位の貿易相手国であり、石油製品や鉄鋼板、半導体、精密化学原料、プラスチック製品などを輸入してくれる「お得意様」だ。対日コンプレックスが薄まれば、顧客である日本との関係改善を重視するのは当然だろう。いわば「金持ちケンカせず」の世論を受けて、ユン大統領が「侵略者から協力するパートナーになった」と宣言したのである。
文:M&A Online編集部
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