ビルアックマン氏が活用した「SPARC」と「SPAC」の違いとは

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2017年5月18日、米ネバダ州ラスベガス・SALTカンファレンスで講演するパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントCEO兼ポートフォリオマネジャーのビル・アックマン氏(REUTERS/Richard Brian/File Photo)

ニューヨーク(ロイター)― 米著名投資家ビル・アックマン氏の新しい投資会社となる「パーシング・スクエア・SPARC・ホールディングス」は、これまでの特別買収目的会社(SPAC)とは一線を画す。SPACは取引の不調により米国金融業界での人気を失った。

アックマン氏は先週、SPARCが未公開企業を買収するため投資家から少なくとも15億米ドルを調達することについて米証券取引委員会(SEC)から承認を得られたことを明らかにした。

SPARCは「Special Purpose Acquisition Rights Company」の略で、特別買収権目的会社を意味する。ニューヨークで別の会社と合併して上場させる際の枠組みとして機能し、その過程で資本を注入するという点ではSPACに似ている。

SPARCとSPACの違いは以下の通り。

取引の可視性

SPARCとSPACの最大の違いの一つとして、SPARCはSPACのように投資家からの先行投資を必要としないことが挙げられる。

SPACは新規株式公開(IPO)で投資家から資金を調達する際、具体的な対象企業の名前を挙げるのではなく、買収を狙う企業の一般的な特徴のみを開示する。投資家は買収が開示された段階で、買収に反対票を投じるか株式を償還するオプションが与えられる。

一方、SPARCが投資家から資金を調達するのは、買収が成立・開示されてからになる。アックマン氏の以前の投資会社では、投資家に無償で「買収権」が配られていたが、SPARCでは成立して初めて投資オプションが与えられる。

アックマン氏の以前の投資会社というのは「パーシング・スクエア・トンティーン・ホールディングス(PSTH)」という名のSPAC。PSTHは2020年、IPOで40億ドルを調達し、翌年には米大手音楽会社ユニバーサル・ミュージック・グループの株式2.9%を評価額350億ユーロ(370億ドル)で取得する契約を結んだ。

SECがその型破りな仕組みに疑問を呈し、株主代表訴訟にも発展したことから、PSTHは取引を撤回した。アックマン氏は昨年、その資金を投資家に返還している。

所要期間

SPARCは取引が完了するまでに最長10年を要するが、SPACの大半は2年から3年の期限である。

資金の柔軟性

SPACと違ってSPARCが投資家に求める額は案件の規模によって異なるが、最低でも15億ドル。アックマン氏のヘッジファンド「パーシング・スクエア」はアンカー投資家として、2億5000万ドルから35億ドルの出資を約束している。

投資家に有利な取引

SPACはIPOで資金を上積みする方法としてIPOワラント(新株引受権)を使用するが、SPARCは新株引受権を発行しない。つまり、新株引受権で希薄化されることがないため、投資家の当該企業に対する所有割合が増える。

アックマン氏の新株引受権は減少

アックマン氏が率いるチームは、合併企業について新株引受権の形で最大4.95%の株式を取得するが、一方、SPACでは最大5.95%だった。

引受費用がゼロ

SPACはIPOで通常、調達資金の平均5.5%に相当する引受費用を支払うが、SPARCでは買収権の分配に投資銀行を必要としないため支払いが発生しない。

記事:Svea Herbst-Bayliss(米ロードアイランド州)
編集:Lisa Shumaker

原文:REUTERS/翻訳:M&A Online

この記事は、ロイター・ニュース・アンド・メディア・ジャパンの許諾を得て公開いたします。
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