パーソナルドクターサービスを運営する株式会社ウェルネスがシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による2.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ニッセイ・キャピタル、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND、NOW、エアトリ、アイユーコンサルティンググループ、その他複数の個人投資家。
今回の資金調達により、サービス開発の強化やユーザー層拡大を目指す。
同社が運営する「Wellness」は、パーソナルドクターとの定期面談を通じて、一人ひとりに最適化した予防医療を提供するサービスだ。
ライフスタイルのヒアリングや受けるべき検査のプランニングのほか、検査結果のレビューなどをコーチング形式で実施する。病気やけがをしてからのケアではなく、健康を管理して病気を予防することを重視している点が特徴だ。
自身の健康状態で気になる症状があれば、365日対応のチャットでパーソナルドクターに相談できる。サービス上で健康データを管理しているため、現在の状態と過去の情報をもとにドクターがアドバイスを行う。
サービスは2020年12月に正式リリースし、現在の利用者は約500名になる。Wellnessの利用料は月額33000円から。パーソナルドクターへの相談に加え、提携機関での検査も含めたプランは月額55000円だ。
ユーザーは企業経営者など、将来の健康リスクに備えるビジネスパーソンが多い。海外を拠点に生活していたとしても、いつでも日本のドクターとチャットで会話できる点がユーザーからの好評を得ている。
今回の資金調達に際して、代表取締役で医師の中田 航太郎氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
―― 御社が解決に取り組むのはどのような課題なのでしょうか?
中田氏:医療技術の発達で感染症が克服されつつある現代で怖いのは、生活習慣に起因した疾患です。症状がなかなか出ないことで医療と接点を持つタイミングが適切でないために、気づかないうちに病が進行し、気づいたときには深刻な状態になっていることも珍しくありません。
多くの人が受ける健康診断は、国民全員への医療の提供、という観点で必要な検査が組み込まれています。そのため、患者それぞれのリスクに合わせた検査を健康診断だけで実現することはできません。
また、健康診断で何らかの異常を指摘されても、実際に二次検査で病院に行くのは約2,3割に留まります。異常が見つかっても「自分は大丈夫」と放置してしまう人の中に、重大な疾患を抱える人が潜んでいるんです。
現在では、これまでに比べて費用負担を抑えた検査もできますし、ウェアラブルデバイスなどを通じた自分の健康データ取得もできます。健康な状態であっても適切に医療と接点を持ち、病気になる前の予防医療を推進することが非常に重要です。
―― 創業のきっかけは?
私は元々、救急総合診療医として勤務していました。予防医療に関心を持ったのは学生時代です。
ある時、緊急の患者が運ばれてきて、夜間に10名程度の医師が集まって緊急手術を行いました。何とかその患者は助かった一方で、ただハッピーエンドとして終わらせてしまうことに違和感をおぼえたんです。
実はその患者は数年前から、健康診断で心臓疾患のリスクが高いことがわかっていました。病院で再検査や治療をすることもできたはずです。それにもかかわらず、緊急手術が必要になるまで放置していました。
本来、未然に改善できたはずの病状を放置したことで患者は命の危機にさらされるだけでなく、何名もの医師が緊急手術に動員され、莫大な医療費がかかります。こうした状況を見て、そもそも病気を予防するモデルを確立しなければならないという強い思いが芽生えました。
これまでも、医師がマンツーマンで予防医療を提供するクリニックビジネスはありました。信頼関係も構築される良いサービスである一方、属人性が高いために事業拡大や継続が難しいモデルです。そこで当社はデータをクラウドサービスで一元管理し、属人性のない形でスケールできるモデルとしてWellnessを構想しました。
―― 調達資金の使途について教えてください。
これまでは、大きな広告費をかけずに口コミなどを通じてサービスを成長させてきました。ユーザーのニーズもあることが検証できたので、マーケティング投資を強化してサービスを本格的に拡大させていくことが目的の一つです。
また、現在のユーザーは経営者が中心ですが、数年後にはユーザー層をさらに拡大していきます。法人から、従業員向けの予防医療として当社サービスを活用する引き合いもすでにいただいています。こうした検証と開発も進める予定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
サービスの提供を通じて、我々のプラットフォーム上に人々の健康データが蓄積されていきます。病院に来てからのデータではなく、病院に来る前の健康に関する情報が蓄積している点は大きな特徴です。
これらの医療データとAIを活用して疾病予測モデルを構築することで、例えば「その人が60歳まで生きる確率」がわかるようになります。そうすることで保険料を個別最適化したり、不動産を購入する際の金利も年齢以外の条件で設定できるようになるはずです。健康データをもとにビジネスを発展させていくことは戦略上重要な取り組みです。
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