香港ファンドのオアシス、ドラッグストア2位「ツルハ」の次は調剤薬局首位「アイン」を標的に
隣接するドラッグストア業界と調剤薬局業界をめぐり、横断的な再編の動きがにわかに高まってきた。その引き金を引く格好となったのが他ならぬモノ言う株主だ。
物言う株主(アクティビスト)の動向が注視されている。株式取得が判明すれば、当該企業の株価に影響を与える。6月の株主総会シーズンに向けては、株主還元や経営改善をどう迫るのか株主提案の行方が気になる。日本企業をめぐる物言う株主の最近の状況を点検する。
調剤薬局最大手、アインホールディングスの株価はゴールデンウイーク谷間の5月2日、6268円の年初来最高値(終値は6221円)をつけた。前日の1日、香港投資ファンドのオアシス・マネジメントがアイン株を5.29%買い増し、保有比率を14.89%に高めたことが明らかになり、他の投資家の買いを呼んだのだ。
オアシスは物言う株主として知られ、日本企業が恐れる海外投資ファンドの代表格。オアシスが提出した大量保有(5%ルール)報告書で、アイン株の新規保有が明らかになったのは3月初め。保有比率は9.6%で、アインにとっては1割に迫る大株主が突如出現したのだ。それまで4500円前後だったアイン株価は3日間で900円近く上昇した。
株式の保有目的は「ポートフォリオ投資および重要提案行為」。保有比率が10%を超えるのは時間の問題とみられていたことから、株式の追加取得にさほど驚きはないが、今後の焦点はアインに対してどういった株主提案などを行うのかに注目が移る。さらにオアシスが調剤薬局業界の再編のキャスティングボードを握る可能性もささやかれる。
事実、オアシスには調剤薬局に隣接するドラッグストア業界でその“実績”を持つ。オアシスは3月、かねて対立関係にあり、約13%保有するドラッグストア2位のツルハホールディングスの株式をイオンに1000億円強で売却。これを伴い、イオンは子会社でドラッグストア首位のウエルシアホールディングスとツルハを2027年末までに経営統合することで動きだした。
4月初め、花王に対して化粧品とスキンケアへの集中を柱とする構造改革を要求したのもオアシスだ。花王が2023年12月期まで5期連続で最終減益となっていることを問題視した。オアシスは花王株を3%超保有するという。
国内投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)は物言う株主を自称してはばからない。4月半ば、「ブルックスブラザーズ」「ニューヨーカー」などのブランドで知られるアパレル中堅のダイドーリミテッドに対して鍋割宰社長ら4人の取締役再任に反対すると表明。6月に開かれるダイドーの定時株主総会で、独自の取締役候補6人の選任を求める株主提案を諮る。
ストラテジックはダイドー株の24.85%を保有する。ダイドーはアパレル不況で販売不振が続き、万年赤字に陥っている。
ストラテジックはダイドーのほか、東亜道路工業、大阪製鉄、日産車体、極東開発工業、京阪神ビルディング、文化シャッター、淀川製鋼所が6月に開く定時株主総会でも増配などの株主還元を提案することを公表しているが、経営陣の刷新を要求するのはダイドーだけだ。
では旧村上ファンド系の投資会社の動きはどうか。今年に入って5%超の新規保有が判明したのは大平洋金属(1月)、あおぞら銀行(2月)、JSR(4月、すでに売却)の3銘柄で、いずれも取得したのはシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)。
大平洋金属は1度買い増した後、2度売却して保有割合を4.16%に、あおぞら銀行は3度買い増して保有割合を8.92%としているが、いずれもここ2カ月は動きが止まっている。
旧村上系の別の投資会社である南青山不動産(東京都渋谷区)は三井住友建設株の保有割合を今年に入り12.54%まで高めた。エスグラントコーポレーション(同)も昨年10月に新規保有が分かったクレハ株の保有割合を11.79%まで高めている。
シンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズは東北新社株について、今年4度買い増して17.65%まで保有割合を高めた。3Dは2月に「東北新社の企業価値向上策」と題する提案資料を公表。これを踏まえ、東北新社は4月半ば、過剰資本の解消(株主還元による自己資本の適正化)などの対応方針を発表した。
英国投資ファンドのゼナーアセットマネジメントは日本でこれまでなじみがなかったが、4月下旬、3件の大量保有報告書を提出した。新規保有した銘柄は栗本鉄工所、ヒラノテクシード、エアリンク。いずれも投資(投資一任契約にかかる顧客資産の運用)を主な目的とするが、「状況に応じて、発行者の経営陣との意見交換や重要提案行為などを行う場合がある」としている。
◎代表的な物言う株主と主な保有銘柄(HDはホールディングスの略)
保有者 | 保有割合%(花王を除き、直近の大量保有報告書に基づく) |
オアシス・マネジメント(香港) | アインHD14.89%、熊谷組10.21%、DIC8.56%、サン電子18.79%、シダックス9.74%、花王3%超 |
3Dインベストメント・パートナーズ(シンガポール) | 東北新社17.65%、サッポロHD15.97%、エイベックス4.55% |
エフィッシモキャピタルマネージメント(同) | 川崎汽船38.52%、不動テトラ19.13%、ライフネット生命保険19.71%、第一生命HD9.88%、メルコHD10.52%、リコー14.69%、サンケン電気19.16% |
ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド(英国) | ホギメディカル10.05%、栄研化学10.47%、グッドスピード23.46%、文化シャッター7.13%、あすか製薬HD7.69%、帝国繊維5.0%、明星工業5.32% |
ストラテジックキャピタル(日本) | ダイドーリミテッド24.85%、東亜道路工業12.75%、大阪製鉄6.19%、京阪神ビルディング5.09%、日本証券金融3.96% |
シティインデックスイレブンス(同、※) | あおぞら銀行8.92%、寺岡製作所9.31%、大平洋金属4.16%、リョーサン15.04% |
エスグラントコーポレーション(同、※) | アルプスアルパイン11.32%、クレハ11.79% |
南青山不動産(同、※) | 三井住友建設12.54%、大豊建設13.66%、グローセル4.94% |
※旧村上ファンド系の投資会社
文:M&A Online
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隣接するドラッグストア業界と調剤薬局業界をめぐり、横断的な再編の動きがにわかに高まってきた。その引き金を引く格好となったのが他ならぬモノ言う株主だ。