要はそのスピードが遅すぎたということだ。豊田会長は「ここ1〜2年で今後30〜40年の景色が変わる」との見方を示したが、米中がシェア固めのラストスパートに入り、欧州と韓国が先行グループ落ちを免れようと必死の力走をしている中で、ようやく日本がスタートを切ったという状況だ。
「日本は技術力では決して遅れていない」と強調する豊田会長だが、NIKKEI MobilityによるとEVの商品競争力を大きく左右する電費(走行距離あたりの電力消費量)で、車両が軽い日産の軽EV「サクラ」よりもテスラ「モデル3」の方が良好という結果が出ている。生産体制の強化と同時に、先行する海外勢とのEV性能格差をどう縮めるのかといった難問にも挑戦しなくてはならない。
日本車メーカーの最終的な防衛ラインは「国内市場」だ。海外でのEVシフトで完敗しても、国内市場だけで通用する日本人好みのEVを開発して420万台の市場を死守する。基幹部品の車載電池を安価で高品質な海外メーカーから調達すれば、車両価格を抑えることも不可能ではない。幸いにして、国内消費者の「国産品」への信頼性は高い。
国産家電メーカーが有機ELパネルを韓国や中国から輸入して、音響やSNS連携などの付加機能と「国産品」のブランド力を頼りに国内市場で生き残っているのと同じ構図だ。一般消費者が自動車メーカーを「応援」できることと言えば、新車購入ぐらいしかない。
豊田会長が要請した「応援」とは「国産EVを購入してほしい」と考えるのが妥当だ。確かに出遅れた国産EVが生き残るには、最も実現可能性が高い問題解決法だろう。こうした未来を予見した上での「応援」要請だとすれば、自工会会長にふさわしい慧眼*と言うほかない。
文:M&A Online
*豊田自工会会長が「頑張れ日本と応援して!」と訴えた切実な理由 を改題しました。
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