次に、「適格再編が有利だよね」と勘違いするケースの落とし穴について触れたいと思います。
覚えておきたいのは、「巨額の欠損金を有している場合、むしろ適格組織再編の方が、欠損金消滅のリスクがある。」ということです。
『欠損金・含み損失の使用制限 原則として、引き継ぐが、支配関係が生じた(買収した)のが合併事業年度開始の日の5年以内の場合、合併法人or被合併法人の欠損金・含み損失の使用制限が生じる。(ただし、共同事業を営むものとして一定の要件に該当する合併ならば制限なし)』
例えば、ある2つの会社があったとします。
A社 : 欠損金1000億円を有している大きな会社。
B社 : A社の100%子会社である小さな会社。休眠中である。
こんな状況で、何気なくA社がB社を吸収合併しました。
A社は100%子会社を吸収したので、税務上は「適格合併」になります。
「はぁ、合併終わった。”適格合併”だから何もないね~。B社は小さな会社だしね~。ラクチンラクチン。」
なんてビールを飲んでいる最中に、あることを思い出します。
「あれ?A社とB社って”みなし共同事業要件”を満たしていたんだっけ?」
この”みなし共同事業要件”とは、税務上の一定の要件です。
要件を満たせば欠損金の引き継ぎ制限はありませんが、気になって調べてみたところ、みなし共同事業要件を満たしていないことがわかりました・・・。
こうなると、A社の欠損金1,000億円は吹き飛ぶ(消滅する)可能性があるのです。
1,000億円の欠損金を有効利用したいのに、これが吹き飛べば、約400億円の納税負担となります。
むしろ、「非適格合併」なら欠損金が消滅するリスクはありませんでした。
「だったら非適格合併になるように設計すれば良かった・・・。」となる可能性もあるのです。
欠損金だけではありません。
含み損(一定の資産に関するものを除く)にもこのような使用制限があるので、要注意です。
私自身は、一般的な組織再編はともかく、巨額の欠損金や含み損を有する会社の組織再編(合併・分割等)は本当に慎重に検討すべきだと思います。超デカイ会社が、超小さいグループ会社を吸収合併したような場合も、上記のような落とし穴があり得るのです。
ケースバイケースですが、そのような組織再編の場合は、むしろ「適格」よりも「非適格」の方が安全な場合もあるのです。
組織再編は、よく調べてから実行しましょう。
次回は、「欠損金」「含み損」の使用制限についてお話します。
[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集]M&A Online編集部
本記事は、「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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