そんなのアリ? 日本IBMの巨額節税のカラクリとは?

 IBMは過去に行った巨額の節税に関する訴訟で地裁、高裁と勝訴が続いている。どのような争点があるのだろうか。「『みなし配当』と『連結納税』の組み合わせで、IBM側が大幅な節税を達成した」と畑中孝介税理士は説明する。

 訴訟について、事実関係をまとめると次のとおり。2002年、米IBMは、同社の子会社である有限会社アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス(以下IBMH)に日本アイ・ビー・エム(以下日本IBM)株を売却、日本IBMの持ち株会社とした。その上で、IBMHは、所有する株の一部を日本IBMに購入と同等の対価で数回にわたって売却。

 購入と同等の対価で売却したのであれば、譲渡損益はゼロのはずである。しかし、実際にはその都度、譲渡損を計上、最終的に約4000億円弱に達した。

「これを実現したのが、自社株購入による『みなし配当』の適用です。『みなし配当』とは、自社株を購入した際、その対価のうちの一定分(資本金相当分以外)を配当としてみなすことができる制度です。相手の自社株を法人が売却した際、このみなし配当は『益金不算入』(利益としない)とすることが当時は無制限に認められていました」(畑中税理士)

 そこで、売却した対価のうちの一部をみなし配当とし、みなし配当分を減額した譲渡額と取得額の差を損益として計上。さらに、親会社と子会社の損益を合算して納税できる「連結納税」を利用。この譲渡損と日本IBM社の黒字を相殺して利益を減少させ、大幅な節税を達成した。

「税務署は、このような措置は租税回避のためで経済合理性がないとして、課税処分としましたが、IBM側が訴訟を起こし、勝訴が続いているわけです。心情的には課税逃れとしか言いようがありませんが、武富士事件と同様、『租税法律主義』の原則上、当時のIBMの行為は法律にのっとった行為であり正当であると考えられます」と畑中税理士は話す。

 さすがIBM、ともいえそうだが、10年からは規制が強化され、これとまったく同じスキームによって節税することは現状認められないという。このように、一時の節税で勝利しても、長期的には規制の強化という結果を招くこともあるようだ。

取材・文:小林麻理/監修:M&A Online編集部

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