次は、テレビで紹介されることの多い西麻布の「けんしろう」です。月間の出荷数が30頭を超えないと言われる幻の「尾崎牛」を堪能できるお店です。オーナーシェフである岩崎健志郎氏がオープンしました。「けんしろう」の知名度をいっきに高めた料理が、肉の瞬間燻製。焼いた肉に香り高い煙を閉じ込めたものです。テーブルで蓋を開けるエンターテイメント性の高さも話題となりました。そのほか、雪室でじっくり熟成させたスノーエイジングと呼ばれる技法を用いた肉など、ひと手間、ふた手間かけた絶品料理が並んでいます。ワインはソムリエが厳選した銘柄が50種類以上常備されています。
完全予約、完全個室制となっているので、有名人の御用達となっているようです。ゆったりと静かな場所で過ごしたいなら抜群の店づくり。料亭のような飛び石のしつらえや、木組みのドアなどに高級感が漂っています。プライベートだけではなく、接待などにも十分使えそうです。
「けんしろう」はTBIホールディングスの店舗です。数々の名店で修行を積んだ牛肉マイスター・岩崎健志郎氏がTBIから出資を受けてオープンしました。TBIは売上高300億円、店舗は140以上を展開しています。居酒屋業界の中では比較的大きい方です。同社は投資ファンド・インテグラルの出資を受けて、成長を加速しています。もともとは、いわゆる”キャッチ系居酒屋”でした。路上で客引きを行って集客するお店です。
キャッチ系のお店は客への水増し請求問題などが表面化し、自治体が規制を強化し始めて一気に衰退しました。危機感を抱いたTBIが見出した活路が業態開発です。他社にはないコンセプトや料理で差別化を図り、集客に繋げようとしています。その一つが「けんしろう」です。人気店となったことで、その狙いは見事当たりました。
TBIはしゃぶしゃぶ業態の「めり乃」や、チーズとはちみつの「ビーハウス」といったインスタ映えする業態も、次々と世に送り出しています。幅広い業態を開発してポートフォリオを強固にし、競争力の強い会社に成長しています。