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“大人起業家”が考える「成功するスタートアップ」 プロトスター株式会社・栗島祐介CCO

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資金調達のうまい人・ヘタな人

IPOを含めて数多くの資金調達の現場を見てきた栗島氏。率直にスタートアップ・起業家のなかに「資金調達のうまい人・ヘタな人」がいるかを聞いてみた。

投資家には、その投資家なりに投資先を見極める“フォーマット”がある。事業の仮説・検証状況、トラクション(一定の顧客をつかんだり成長の兆しを引き寄せたりする牽引力)の状況、それらに対して経済性は成り立つのか――、そのようなフォーマットの基準を理解してプレゼンテーションできない人は、資金調達がうまい人とはいえない。

「投資家側のロジックが理解できていないので、それだと投資家側の思考が停止して、検討しようがないといった状況にもなってしまいますよね」

資金調達を受けるスタートアップ側は、自分の持つ技術なり事業能力なりに、相当の自信があり、その裏づけもあるはずだ。そこで、せめて「何が検証できていて、何が未検証なのか」を明確に示すプレゼンテーション能力が求められる。そのうえで算出された調達希望額が、現下の資金調達の相場感に合致しているかどうか、ということだろう。

「弊社では、そのような相場感のデータもとっていて、学生や若手の優秀な起業家だと大きな額を引き出せるケースでも、同じ状況下で、中途半端な社会人経験があり起業したばかりとなると、相場感が落ちてしまうケースもあります」

「資金調達やM&A活用の上手下手も実際にはあちますね」(栗島氏)

そのような場合には、技術や事業のプロタイプを示し、いわば“試作したモノ”で説得力を高める必要もある。「コンセプトはいらない、行動して実績をつくってからプレゼンの場にきてください」といったことだろう。その仮説検証を重ねていけば、バリュエーション(投資の価値計算や事業の経済性評価のこと)が変わってくる。

「投資家は『コレ!』と思う事業や技術には積極的に投資したい一方で、レピュテーションリスク(自社の企業評価を落とすリスク)はとりたくないもの。その可能性があると判断される起業家の案件の場合、投資家は、『他の投資家が投資するなら検討しますので、リード投資家(一番大きな投資持分を有するパートナーや投資家のこと)を連れてきてください』と逃げるケースもあります」

一方、M&Aのほうはどうか。スタートアップ・起業家で「M&Aをうまく活用できる人・できない人」という違いはあるのだろうか。

「M&Aについては、すべてを“数字・計量”で見ています」

M&Aでのシナジーも、「そのM&Aによって、実額でいくら伸びが期待できるか」という判断だろう。それに対して定性的な効果を力説するスタートアップ・起業家もいるが、「それは違う」という考え方だ。

「たとえば、VCのバリュエーションの算出と、M&Aのバリュエーションの算出はまったく異なるのに、VCのバリュエーションが10億円だから、10億円で売却できると考える起業家もいます。その状態のまままだと、M&Aをうまく活用できるとは思えません」

単純化した例で示そう。FaceBookなどSNSの影響か、数年前はユーザー数が最重要という考えがあった。たとえば、VCがバリェーションを10億円と算出したビジネスのユーザー数が200万人だったとする。その200万のユーザーからいくら売り上げているかを確認すると、ほぼゼロならば、そのビジネスを買ったとしてもコストしか生まない。ビジネスとして定性的な評価は優れていたとしても、いつかはなくなるビジネスだ。すると、「つぶれてから買えばいい」と考える買収側もいるはずだ。

それでも「買いたい」と判断したとする。200万ユーザーの1人当たりコストが100円と算出でき、200万ユーザーのうち1割すなわち20万がアクティブユーザーだったとする。そうなれば、20万ユーザー×100円で、2,000万円のコストをかけて獲得するほかない、という判断ができる。いくら定性的な価値を主張されても、損得勘定がきちんとできる買収側は、「そのM&Aは成立しにくい」と考える――、そのようなことである。

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