別の観点からも理由を述べよう。中世欧州におけるユダヤ教徒は「圧倒的マイノリティ」である。その中でも、金融業に進出できるほどの余剰資金を持った成功者はさらに限られたはずだ。
多くのユダヤ教徒は共同体の相互扶助の仕組みの中で、手に付けた職を生かして辛うじて日々を送っていたはずである。圧倒的マイノリティのユダヤ教徒の、またその中のほんの一部の成功者の余剰運転資金の運用だけで、キリスト教社会全体の資金需要をすべて賄えたとは到底思えない...
スペインに渡ったユダヤ教徒たちは、どのようにして経済的に自立し、定住したのか。そして、どのような経緯で、金融の発展に関わっていくことになるのか。今回から本題となるユダヤ教徒と企業金融(コーポレートファイナンス)の歴史について触れていきたい。
投資ファンドは「1株1議決権」を前提として、株主権を存分に行使してリターンの最大化を目指す。ある意味、米国株主資本主義を究極まで純化した存在といえる。その投資ファンドが自らは一般株主の権利を著しく制限する特殊な議決権構造を採用しているのだ。