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【M&Aインサイト】株式買い取り請求権制度の利用

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投資先の会社が合併株式交換などの「組織再編」を決定した場合に、
①反対の意向を企業に通知し、
株主総会で組織再編を決議する際に、株主が反対票を投じる必要がある。
③その後、反対株主は株式買い取り請求権を行使し、企業と反対株主で買い取り価格を協議する。
④30日以内に買い取り価格が合意できれば、「合意した価格」で企業が株式を買い取ることとなる。
⑤組織再編の効力発生日から30 日以内に合意できなかった場合には、その後30 日以内に価格決定を裁判所に求めて、裁判所の決定価格で企業が買い取ることとなる。

 上記プロセスで問題となるのが、買い取り価格の決定である。株式買い取り請求権を行使する株主は、できるだけ高く買い取ってもらいたいと考えるであろうし、企業サイドは可能な限り安く買い取りたいと考えるためである。買い取り価格に関して、会社法では「公正な価格」というのみであり、何をもって公正というのかは立場によってさまざまに解釈が可能なためである。

 従って、株式の買い取り請求が行われる場合には、当事者間で買い取り価格の合意が行われることはまれで、裁判所が買い取り価格を決定することが多い。公正な中立者である裁判所が決めた価格であれば、両社とも納得せざるを得ないという側面もある。

 また、株式買い取り請求の場合には、自社株買いとは異なり、仮に配当可能利益がなくても買い取りに応じなければならないことも買い取り請求を利用する誘引となっているとの指摘もある。

 本来的には株式の買い取り請求制度は、合併などの組織再編に反対する少数株主の利益保護を念頭においた規定である。しかし、ファンドなどの出口戦略の一環で利用されるケースが頻発するようであれば、制度利用の制限を検討する必要性が高まるであろう。

文:公認会計士 小林憲司(ビバルコ・ジャパン レポートVol.32より転載)