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コーポレートガバナンスと企業業績の関係

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■ 4.平成28年度の経済財政白書の位置づけ

 キャッシュリッチ(現金預金残高が多い)の割には、売上高利益率が低いのは、日本企業が積極的な投資をして来なかったからであると考えられています。
社外取締役が経営者を叱咤激励して、積極的なリスクテイクを促すことにより、「稼ぐ力」が強化できることがあるでしょう。

 しかし、政府としては「稼ぐ力」を高めるためにはコーポレートガバナンス強化と謳った手前、なんらかの証拠を示す必要があります。平成28年度の経済再生白書では、下記のとおりコーポレートガバナンスとROEに有意な関係があることが記述されています。

 「企業のコーポレートガバナンスへの取組とROEの関係をみると、「独立社外取締役数」については、増加した企業群、そして、「外国人株式所有比率」については、議決権の3分の1を上回る企業群が、いずれも、コーポレートガバナンスへの取組が進んでいる企業群において、ROEが高くなる傾向が示された。」

 おそらく、これは、「稼ぐ力」とコーポレートガバナンス強化との有意義な関係を求めた記述と思いますが、あまり成功しているとは言えません。
つまり、業績の良い会社は、資金的な余裕があるためコーポレートガバナンスについても熱心という傾向があることも事実ではないでしょうか。
コーポレートガバナンスが良いから儲かったのではなく、儲かった会社がコーポレートガバナンスを良くした、ということも逆に言えると思います。

■ 5.過去のデータからは判断不能

 コーポレートガバナンスと企業業績の関係を証明するためには、もう少し時間がかると筆者は考えています。前述の「日本再興計画」改定2014には、「コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革」すると書いてあります。このため、コーポレートガバナンスの目的がコンプライアンスであった時代を対象とした分析では判断できないと思います。

文:株式会社ビズサプリ ビズサプリ通信(vol.38 2016.10.06)より転載

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久保 惠一

学歴:1976年 大阪大学経済学部卒業

職歴:大学在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツに入社。カナダバンクーバーの提携先会計事務所で実務経験。大手メーカーや銀行などの会計監査と株式上場支援を経験。監査法人内でリスクコンサルティング事業を立ち上げ、15名から450名の組織に拡大した。 監査法人トーマツのボードメンバー、デロイトトーマツリスクサービス株式会社代表取締役社長、トーマツ企業リスク研究所所長、情報テクノロジー本部長を歴任。石油公団資産評価・整理検討小委員会、東京電力点検記録等不正の調査過程に関する評価委員会、総合資源エネルギー調査会石油部会、原子力施設安全情報申告調査委員会などの政府委員会に参加。大手信販会社総会屋利益供与事件、信用情報機関の個人情報漏洩事件、東京2020オリンピック・パラリンピック招致に関わる海外支払の調査に関与。 元中央大学大学院客員教授

資格:•公認会計士•カナダ(ブリティッシュコロンビア州)勅許会計士

主な著書:•『東芝事件総決算』(単著、日本経済新聞社)•『水リスク−大不足時代を勝ち抜く企業戦略』(編著、日本経済新聞出版社)•『リスクインテリジェンス・カンパニー』(編著、日本経済新聞社)•『内部統制報告実務詳解』(編著、商事法務)


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