ホテル旅館ファンドはリートへの橋渡しを担う

新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国の宿泊施設の経営状態は深刻です。星野リゾートも同様に打撃を受けており、簡単に他社を買収して再生ができるほどの資金的な余裕はありません。観光業の厳しい状況を考慮すると、金融機関からの借り入れも困難を伴います。そうかといって、収益性の悪い物件をリートが買い取るわけにもいきません。

そこでホテル旅館ファンドの登場となります。星野リゾートブランドで再生できそうな物件を、ホテル旅館ファンドが資金注入します。星野リゾートは「界」などのリブランドで物件の価値向上を図り、収益性が改善したら星野リゾート・リートがホテル旅館ファンドから物件を買い取る。この一連のサイクルが、ファンドの立ち上げで可能になりました。

ホテル旅館ファンドの総額は100~200億円を想定しています。上場時の星野リゾート・リートの資産規模が6物件で150億円でした。同規模のファンドとなります。ファンドを運営するH&Rアセットソリューションズは、星野リゾートが50%、リサ・パートナーズが50%出資をします。

ホテル旅館ファンド
星野リゾート・リート「決算説明資料」より

リサ・パートナーズは主にファンドの組成を担います。リサは全国の金融機関と提携し、再生関連ファンドを56件、地方活性化ファンドを9件抱えています。特に地方銀行との繋がりが強く、ファンドへの出資は地銀が担うことになりそうです。地方の観光ホテルや旅館に貸し付けていた地銀が、手持ちの不良債権をファンドに託すことで、迅速に処理できる可能性があります。地銀は出資したファンドからリターンを得ることもできます。

運営施設が拡大できる星野リゾート、ファンドの運用で収益が得られるリサ、不良債権処理とファンドからのリターンが得られる金融機関、施設と従業員の雇用が守れるホテル・旅館どれもがメリットを享受できる仕組みです。

星野リゾートは、12か月から18か月で国内旅行が少しずつ回復し、ワクチンなどの治療薬が登場してインバウンドが復活するとの予想を立てています。直近では、「マイクロツーリズム」と呼ばれる国内の近隣市場の需要喚起に力を入れ始めました。多くの人が海外旅行に行けない分、近隣の需要が膨らむとみているのです。

インバウンドが活況だったかつての賑わいを取り戻すには、相当な時間がかかります。その空白期間を乗り越えられるだけの、潤沢なキャッシュを持っている宿泊施設は多くありません。ホテル旅館ファンドは、立地や建物に恵まれているにも関わらず、新型コロナウイルスによって持ちこたえることができない。そうした宿泊施設の救世主となるかもしれません。

文:麦とホップ@ビールを飲む理由