外資系銀行、スタートアップを踏まえてヤプリにCFOとして加わる

角田氏は、UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)に学んだあと、外資系投資銀行でM&Aを担当してきた。その後、株式会社マナボ(2018年6月に駿台グループのエスエイティーティー株式会社に全株式を譲渡し、駿台グループの一員となる)の経営にCFOとして携わり、2017年からヤプリの経営陣に加わることになる。

マナボの経営に携わっていた当時からヤプリ代表の庵原氏とは親交があり、マナボを退職後も、庵原氏に「ウチに来ないか」と誘われていたという。

「当初は、自分がヤプリで貢献できる部分は少ないのでは? と思っていましたが、よくよく聞いてみると貢献できる余地もあった。それ以上にヤプリのプロダクトとしての重厚さ、そこから生まれる競争優位性に興味を持ったわけです」

その重厚さとは、ウェブ上にるアプリ構築・運用ができる管理画面を軸に、単一のプラットフォーム上で約300社の多種多様なアプリがiOSとAndroid両方のOSできちんと挙動するという、昨今トレンドのリーンなプロダクト開発からはかけ離れた膨大な仕様だ。

「そこに競争優位性があると感じ、CFOとしてヤプリに加わりました」

経営管理・財務面はもちろん、人事・採用、M&AにIPO

スタートアップにおける資金調達のニーズも格段に高まっている

ヤプリの創業メンバーは皆、ヤフーのサービス系で働いていた経歴を持つ。どうしても、コーポレート系・ビジネス系のジャンルの実務は手薄な感は否めない。その部分の充実を角田氏に求めたということもできる。そのため角田氏は、CFOとして同社の資金調達・運用といった財務面はことはもちろんのこと、人事・採用、その他の全社横断的な匿名案件も統括する立場にいる。

「当社は2013年の創業で現在は社員100名を超え、280を超える顧客(企業・事業者)に対応するSaaS(Software as a Service、サース)企業に成長しました。その採用や顧客管理にも携わっています」

角田氏はCFOとして、IPOやM&Aに関する情報収集や対応検討などの業務にも携わっている。その立場から今日の若いスタートアップやその経営者などを見ると、角田氏がマナボに関わっていた5年ほど前と比べても、ずいぶん変わったことと変わらないことがあるという。

「ほんの5年前はスタートアップが1億円の資金調達を実現したということでも大きな話題になりましたが、いまはそのケタが2つほど増えていますよね。びっくりです」

それほど大手のオープンイノベーションをはじめとした資金調達の認知の裾野が広がってきたということだろう。

では、ヤプリは今後、M&AやIPOについて、どう考えているのだろうか。同社の場合、他社をM&Aで買収することはあり得ても、自社をM&Aで売却するという方向性は考えにくい。アプリに関わる事業を営んでいる会社の場合、いくつかあるアプリの1つを事業とみなして譲渡し、そのM&Aによって得た資金で事業の選択・集中に磨きをかける手法はあるが、いわば同社全体を通したプラットフォームでアプリ開発・活用を展開している以上、何かを切り出して売却するという手法は考えにくいからだ。

むしろ、今後の事業展開においてはIPOの方向性が事業に合致した考え方だろう。「当社としては、基本はIPO路線で考えつつも、現実には是々非々で対応していきたいですね」としている。

同社は今後も、マーケティングソリューション分野、エンタープライズ系の分野でのアプリ市場の拡大をめざしている。そのエンタープライズ系では、クライアントの採用分野での活用も広がってきた。今後も、アプリの可能性を見極めながら、顧客の経済的な効果を踏まえながらビジネスを展開していきたいとする。

 聞き手・文:M&A Online編集部