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「スイングバイIPO」の効果は? KDDI中馬和彦氏&Coalis原田明典氏、スタートアップの新たな選択肢を語る

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「第24回Conference of S venture Lab.」登壇者

ストライク<6196>は6月19日、GROWTH 文京飯田橋(東京都文京区)でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第24回 Conference of S venture Lab.」を開いた。「成長戦略としてのM&AとスイングバイIPO」をテーマにしたトークセッションやスタートアップ2社によるピッチ、名刺交換会などで交流を深めた。

スイングバイIPOで広がる可能性

トークセッションではKDDIオープンイノベーション推進本部長兼ビジネス共創推進室長の中馬和彦氏とスタートアップのオープンイノベーションを支援するCoalis(東京都渋谷区)ジェネラルパートナーの原田明典氏が登壇。スタートアップが大企業のサポートを得て、加速度的な成長をし上場を目指す「スイングバイIPO」の可能性について語り合った。

トークセッションでスイングバイIPOの可能性を語るKDDIの中馬氏(左)とCoalisの原田氏

KDDIでは2017年8月にソラコムへのM&Aを実施して同社のIoT(モノのインターネット)事業の成長を支援。2024年3月に「スイングバイIPO」により、ソラコムの東京証券取引所グロース市場上場を後押ししている。

中馬氏は「ソラコムでは創業者も相当数の株式を保有しており、事業を売却するのではなく継続する上で必要な成長を目指していた」とし、そこで編み出したのが、大企業のサポートを得るために傘下に入る「『スイングバイM&A』だった」と明かす。

スタートアップには良いことづくめ

早期の成長軌道に乗りたいスタートアップにとって気になるのは、「スイングバイIPO」の効果。これについて中馬氏は「スタートアップにとっては良いことづくめ。ただ、数字を厳しく問われるため窮屈な思いをするかもしれないが、上場を目指すなら必須な要件だ。ソラコムの場合は事業に専念できたことで、成長が加速した」という。

ソラコム事例をもとにスイングバイIPOの効果を語るKDDIの中馬氏

原田氏はDeNAでベンチャー投資やM&Aを通じてライブ事業を主力のゲーム事業に並ぶ事業に育てたり、mixiでSNS事業のオープンイノベーションを推進して多くスタートアップとソーシャルゲーム市場を創出した経験から、「M&Aでは『アチョー!』と気合を入れて、思い切りよく決断する『アチョー買収』が必要なこともあるが、スタートアップ支援に慎重な経営陣も少なくない。M&A、IPOのいわば良いとこ取りといえる『スイングバイIPO』の登場で選択肢が広がり、スタートアップ投資の促進に役立つのではないか」と期待する。

M&Aでは思い切りよく決断する「アチョー買収」も必要とCoalisの原田氏

今後の「スイングバイIPO」について、中馬氏は「スタートアップにとってはIPO、M&Aに続く第三の道ができた。大企業がユニコーン企業の誕生を支援する仕組みだ。ただ、『スイングバイIPO』はイグジット(出口)ではない。さらなる高みを目指すためのスタートなのだということをしっかり認識してほしい」と注文をつけた。

原田氏は「スタートアップの成長に、新しいフォーマットができた。『スイングバイIPO』を広げていくべきだと思う」とエールを送っている。

「スイングバイIPO」では、スタートアップの支援も重要だ。中馬氏は「赤字の間は私たちの部門ではなく、KDDIの全社コストを使って支援する。コストは一様に希薄化されていて、バームクーヘンやデニッシュのように薄くなっている。連結される赤字などのリスクは、稼いでいる部門が皆で取っている。そういう体制でやらないとダメ」と強調する。

会場の様子

スタートアップ2社がピッチ

ピッチでは「シルクの力で、新しい未来を実現する」をスローガンに絹素材を食品や化粧品、医療などの分野で活用するための技術革新に取り組むユナイテッドシルク(松山市)と、空気から水を作り出すテクノロジーで浄水施設と水道配管なしに地域単位での上水供給の完結を目指すENELL(東京都港区)の2社が、自社のビジネスモデルを紹介。参加者は真剣な表情で聴き入っていた。

第25回のConference of S venture Lab.は7月2日、イノベーション・ハブ・ひろしまCamps(広島市)で「広島の『自動車販売店』から『有力企業』への多角化とM&A」をテーマに、ヒロマツホールディングス会長兼CEO(最高経営責任者)の松田哲也氏とストライク社長の荒井邦彦氏が登壇する。

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文:糸永正行編集委員

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