一般的な業務で例えてみよう。自動車の開発者が「マネジメント契約」を結ぶ場合、自動車メーカーに入社して自動車の開発に従事する。開発業務は与えられるが、基本的に仕事は選べないし、給与は会社が決める。もちろん勝手に他社の仕事はできない。トヨタ自動車の開発社員が「私はオープンカーが好きなので、マツダ『ロードスター』の開発に参加します」というわけにはいかないのだ。
しかし「エージェント契約」であれば、自分が選んだ受注営業会社が複数の自動車メーカーからスポーツカーの設計業務を取ってきて、報酬交渉会社が開発料について交渉、契約会社を通じて業務契約を結び、スケジュール管理会社が会議や打ち合わせなどの日程を調整、派遣されたマネージャーが出張の手配や連絡、情報共有を支援してくれるといった具合だ。
芸能界では事務所主導で報酬が決まる「マネジメント契約」よりも、芸能人主導で各業務の手数料を支払う形の「エージェント契約」の方が収入水準が高いとされる。加えて、それぞれの業務で最適な人材を選べるため、自分の能力を最大限に引き出せるというメリットも大きい。
サラリーマンに例えれば、「優秀な営業」「最も高い報酬を提示してくれる人事労務」「働きやすさをサポートしてくれる総務」などを自由に選べるということになる。
もっとも、芸能人が「エージェント契約」で依頼する業務のほとんどは受注営業と出演料交渉で、その他については芸能人が自ら処理するか専属スタッフを雇用して対応しているという。