【悲報】銘酒が消える・・・東京23区内で最古の酒蔵・小山酒造が廃業へ

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職人不足の深刻化が浮上

 こうしたなかでの突然の廃業の知らせだ。取引先や業界関係者から驚きの声があがるのも無理はない。
 小山酒造に廃業のいきさつや経緯についての取材を申し込んだが、「(廃業後の)会社の方向性など様々な事を検討中の段階で、現時点では取材に協力できない」と詳細は明らかにされなかった。ただ、関係者によると「職人の手当てが難しくなったと説明を受けた」という。
 オートメーション化された大手メーカーはともかく、昔ながらの酒造りは激務で知られ、特に冬場の水仕事は体に堪える。同社も若い人材の確保に苦心していたと聞かれ、廃業を決断した一因となったようだ。  飲食業や建設業をはじめ「人手不足」は様々な業種で問題になっている。長年の経験がものをいう伝統産業の酒づくりの現場ではなおさら、職人の高齢化と同時に、若い人材の確保が深刻化している。
 3月1日以降、同社の清酒商品はオーナー家同士が遠縁関係にあたる清酒製造大手の(株)小山本家酒造(TSR企業コード:310007666、法人番号: 5030001002954、さいたま市西区、小山景一社長)が引き継ぐ方向で調整中という。小山本家酒造は「世界鷹」や「くらのすけ」などのブランドで知られる。「丸眞正宗」は製造拠点を移して生産を続けられる見込みだが、「東京23区内製」ではなくなる。多くの関係者から惜しまれつつ、小山酒造は140年の歴史に幕を閉じる。

 100年以上の業歴を持つ老舗企業は全国で約3万5,000社。このうち、業種別では清酒製造業が最も多く、約900社を占める。小山酒造もその1社だ。
 一方、2017年の休廃業・解散企業は2万8,142社だった。沈静化が続く倒産件数(2017年8,405件)に反して、その数は約3.5倍にのぼり、高止まりが続く。
 将来の展望が描けないなど、休廃業・解散の理由は様々だ。だが、全国で人手不足感が広がるなか、徒弟制の性格が色濃く、技術承継に多くの時間を要する伝統産業の現場では「人手不足」がより深刻だ。伝統産業は長年の手法と機械化の選択を迫られると同時に、生き残りにも直面している。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年1月31日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

東京商工リサーチ「データを読む」より

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