「アドミラル・トーゴー(東郷提督)」。世界から尊敬を込めてこう呼ばれる東郷平八郎(とうごう へいはちろう)。日露戦争で連合艦隊司令長官として指揮し、最強とされたロシアのバルチック艦隊を日本海海戦(1905年5月)で撃破し、世界海戦史に刻まれる勝利を成し遂げた。日本軍はこの戦いで海に投げ出されたロシア兵を残らず救助し、十分な食事を与えるなど捕虜への紳士的な対応でも高く評価された。1926年11月には、国際ニュース誌「TIME」の表紙を日本人として初めて飾った。かつて世界で最も有名な日本人といえば、東郷だったのだ。
日本海海戦で東郷司令長官が乗艦した旗艦の戦艦「三笠」はマストにZ(信号)旗を掲げ、「皇国の興廃この一戦にあり各員一層、奮励努力せよ」との号令を伝えた。一国の存亡をかけた戦いで大勝利を収めたことにちなんで、その後、難事を打開する場合に「Z旗を掲げる」という慣用語ができたとされる。
東京・神宮前にあるのが「東郷神社」。1940年5月に英雄・東郷をまつる勝利の神社として建立された。JR原宿駅・東京メトロ明治神宮前駅からほど近く、明治通り沿いにある。勝運のパワースポットとして人気を得ている。
東郷は薩摩藩(鹿児島県)に生まれた。明治維新後、1871年、24歳で英国海軍に官費留学し、国際法や船乗りの技術を学んだ。日清戦争で浪速艦長として活躍し、海軍大学校長、常備艦隊司令長官、舞鶴鎮守府司令長官などを経て、1903年に連合艦隊司令長官に就いた。日露戦争後の大正期、東郷は東宮御所学問所総裁を7年間務め、昭和天皇の教育を受け持つ大役を果たした。
連合艦隊の先頭に立った戦艦「三笠」は現在、神奈川県横須賀市の三笠公園に記念艦として、その姿を残している。1926(大正15)年に記念艦三笠として保存されたが、第二次大戦後は、解体処分のピンチなどを切り抜け、1961年に改修工事を行い、接収された装備品も返還されて、往時の雄姿を取り戻し、現在にいたっている。艦に足を踏み入れると、戦艦(全長122メートル、幅23メートル)のリアルな様子がひしひしと伝わってくる。展示物も充実し、見どころ満載だ。
この記念艦「三笠」は京急線横須賀中央駅から歩いて約15分。観覧時間は9時~17時30分(冬場は閉館時間が早まる)。観覧料金は大人600円、65歳以上500円、高校生300円、小・中学生無料。
文:M&A Online編集部