日本ではGW興行の後追い作品が、アメリカでは早くもサマーシーズンに向けて映画が公開されていく時期となる6月。超大作からアート系まで非常に振り幅の大きいラインナップとなりました。
また、日本時間5月28日未明には嬉しいニュースが飛び込んできました。6月2日公開予定の是枝裕和監督最新作『怪物』が第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞の2冠を、役所広司がヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(原題)で最優秀男優賞を受賞しました。最優秀男優賞は19年ぶり2人目の受賞、脚本賞の受賞は2021年の『ドライブ・マイ・カー』に続く快挙です。
今月も公開日順にM&A Onlineおすすめの5作品を紹介します。
『万引き家族』の是枝裕和監督の最新作『怪物』は、カンヌ脚本賞を受賞した坂元裕二が脚本を担当。オリジナル脚本が多い是枝監督としては非常に珍しい作品となりました。脚本家の坂元裕二は『東京ラブストーリー(91)』などの月9ドラマを数多く手がけ、最近では映画『花束みたいな恋をした』が大ヒット。是枝監督もカンヌの脚本賞受賞コメントで「(坂元さんとの)相性は良かった」と語っており、早くも次のタッグが期待されます。
本作では安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子らに加えてオーディションで選ばれた黒川想矢、柊木陽太がメインキャストを務めます。音楽は今年3月に死去した坂本龍一が担当、本作が遺作となりました。
「#Me Too運動」を題材にした社会派ドラマ。映画プロデューサーを目指して業界の片隅に身を置いたヒロインが、そこで行われてきた許されない行為を知り、自身のキャリア形成と正義心との間で大きく揺れ動きながら、ある決心をするまでの過程を描きます。職場のパワハラや性的虐待を許容し、蔓延させているシステムへの痛烈な告発に、自分が同じ立場ならどうするか考えさせられます。
主演は3度にわたるエミー賞助演女優賞に輝いたジュリア・ガーナー。監督のキティ・グリーンはドキュメンタリー映画出身ということもあって、膨大な実話から練り上げられた本作品はフィクションでありながらリアリティを持ち合わせています。
映画『アシスタント』オフィシャルサイト(senlisfilms.jp)
マーベルと人気を二分するアメリカで最も古いコミック出版社・DCコミックスの同名キャラクター「フラッシュ(The Flash)」の活躍を描くアクション映画。これまでも『ジャスティス・リーグ』などに登場していましたが、本作では遂に主役を務めます。
フラッシュが時間すら超越する地上最速のスピードを持っていることもあって、過去のDC映画から多くのゲストが登場。ベン・アフレックやマイケル・キートンなどかつてバットマンを演じた俳優が再登場するほか、スーパーガールも登場。時空を超えたヒーローたちが集結した豪華共演となっています。
映画『ザ・フラッシュ』公式サイト(warnerbros.co.jp)
浅田次郎の同名小説を『ロストケア』『水は海に向かって流れる』など今年3作品の映画が公開される前田哲監督が映画化。脚本は『七つの会議』やドラマ「半沢直樹」の丑尾健太郎と、ドラマ「特捜9 season2~4」「下町ロケット」の稲葉一広がタッグを組んでいます。
主演はNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」で主人公を演じている神木隆之介。『るろうに剣心 最終章 The Final』などで時代劇の経験はある神木隆之介ですが、意外にも映画で髷(まげ)姿を披露するのは今回が初です。
豪華キャストが揃った配役で贅沢感のある時代劇に仕上がっており、お金をテーマにしたエンターテインメント作品として老若男女問わず楽しめます。
映画『大名倒産』松竹・公式サイト(shochiku.co.jp)
シリーズ最高の興行収入を記録した前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』から15年ぶりの新作となる第5弾。これまでメガホンを取ってきたスティーブン・スピルバーグがジョージ・ルーカスと共に製作総指揮に回り、代わりに『フォードVSフェラーリ』などのジェームズ・マンゴールドが監督を務めました。
現在80歳のハリソン・フォードが考古学者インディ・ジョーンズを演じるのは、本人も「これが最後」だと宣言しています。敵役は『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』のマッツ・ミケルセンです。
映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』ディズニー公式サイト(disney.co.jp)
正直なところ、今月はおすすめベスト5作品以外にも紹介したい作品がたくさんあり、選定に迷いました。
他にも、アカデミー賞受賞の『ウーマン・トーキング私たちの選択』、生田斗真の新作『渇水』、広瀬すず主演の『水は海に向かって流れる』、ディズニーによる同題実写企画『リトル・マーメイド』、「スパイダーマン」シリーズ最新作『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』、メタバースホラーの『忌怪島/きかいじま』、「東京リベンジャーズ」続編2部作の後編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』など話題作が目白押しです。
いずれも夏休み前までに見ておきたい作品が揃っています。
文:村松健太郎(映画文筆家)/編集:M&A Online