アフリカの植林プロジェクト『グレート・グリーン・ウォール』を旅する映画

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©GREAT GREEN WALL, LTD

気候変動の最前線を横断するドキュメンタリー『グレート・グリーン・ウォール』

4月22日は地球の環境保護への支援を示すための国際的な日、アースデイ。国連もこの日を「国際マザーアース・デー(International Mother Earth Day)」と制定している。そんな日に相応しい映画『グレート・グリーン・ウォール』が本日より全国順次公開となる。

西アフリカのマリ共和国で生まれ、フランスを拠点に活躍するミュージシャンのインナが、アフリカの植林プロジェクト「グレート・グリーン・ウォール (緑の長城)」を旅する壮大なドキュメンタリー映画だ。

西アフリカのサヘル地域は砂漠化が進む地球上最も脆弱な場所の一つといわれており、気候変動の影響によって人々の生活が脅かされている。

急激な気温上昇、砂漠化、干ばつ、食糧難、移民、紛争、孤児…。日本から遠く離れたサヘル地域で何が起きているのか。インナの目と音楽を通して知ってほしい。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像1
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【あらすじ】アフリカ横断8000キロ 植林プロジェクトを巡る壮大な旅へ

世界平均の1.5倍の速さで気温が上昇し、気候変動に直面しているアフリカのサヘル地域。砂漠化や干ばつなどの深刻な土地劣化、食糧不足が引き起こす紛争の過激化などにより、生活が脅かされ人々は移民を余儀なくされている。

加速する気候変動を食い止めるため、2007年からアフリカ11か国の主導で大陸を8000キロメートルにわたって横断する人類史上最大規模の植林プロジェクト「グレート・グリーン・ウォール計画」が開始した。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像2
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現在はまだ15%しか完成していないが、「緑の長城」がすべてつながれば、地球上最大の生きた建造物が誕生する。サヘル地域のコミュニティに対して仕事や食糧、経済的機会を提供し、多くの人々の生活を改善する“アフリカン・ドリーム”の実現となるだろう。

ミュージシャンで環境活動家でもあるインナ・モジャは、「アフリカが、若者にとって夢を持てるような場所にしたい」と熱い想いを口にする。

サヘル地域の現状を自分の目で確かめ、人々を勇気づけるため、「グレート・グリーン・ウォール」を巡るアフリカ横断の旅が始まった。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像3
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紛争孤児の少女や過激派組織に育てられた少年

サハラ砂漠の南に位置し、8000キロメートルにわたって東西に半乾燥地帯が広がるサヘル。ここでの暮らしがいかに困難を極めているか。まずはじっくり想像してほしい。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像4
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サヘル地域の人口は約1億人。わずかな⾬で畑を耕し、家畜を育て、家族を養っている。⽇照りが続けば植物は枯れ、家畜も育たない。⼤地はどんどん砂の海に飲み込まれる。⾷糧不⾜は人々の争いを誘い、過激派組織の台頭を招く。故郷を追われた⼈たちは移⺠となり、小さなボートにぎゅうぎゅう詰めに押し込まれ、あてもなく地中海をさまよう。

このような負の連鎖が、いたるところで繰り返されている。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像5
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インナが出会った紛争孤児の少女は、目の前で父親を殺された。過激派組織の一員として育てられた少年は、銃を手に、殺りくの現場に加わった。元移民の男は、家族のために欧州を何度も目指したがたどりつけず、故郷には戻れないという。

あまりに過酷な彼らの人生に衝撃を受け、言葉を失うインナ。気候変動の影響による紛争で危険にさらされ、多大な被害を受けるのは、いつも脆弱な社会で暮らす⼈たちなのだ。

音楽でアフリカ各地をつなごう

まわりの空気が澄み渡るような、佇まいの美しい人。本作でナビゲーターをつとめるインナ・モジャに筆者が抱いた印象だ。

インナには、この旅で成し遂げたい目標があった。それはセネガルからエチオピアまで、アフリカを横断する道中、各国のミュージシャンたちとともに楽曲をつくり、各地でライブを開催すること。

セネガルのヒップホップ創始者ディディエ・アワディ、マリのブルースバンドのソンゴイ・ブルース、ナイジェリアのポップスターとして知られるワジェ。インナと想いを同じくするミュージシャンたちとのコラボレーションで生み出される音楽は圧巻だ。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像6
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「だれもが未来を変えられる力をもっている」「夢は叶えることができる」

語りかけるようなインナの歌に、人々は心を開放し、本来の笑顔を取り戻す。いつしか一緒に口ずさみ、身体でリズムをとりはじめる。

『グレート・グリーン・ウォール』より画像7
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アフリカン・ドリームが実現するか、それはまだわからない。けれども、世界中のみんなで答えを探し、考え続けることをやめなければ、きっと彼女の言う「アフリカの時代」がやってくる。

文:小川こころ(文筆家/文章スタジオ東京青猫ワークス代表)

『グレート・グリーン・ウォール』
監督・脚本:ジャレッド・P・スコット
製作総指揮:フェルナンド・メイレレス他
出演:インナ・モジャ、ディディエ・アワディ、ソンゴイ・ブルース、ワジェ他
配給:ユナイテッドピープル 原題:The Great Green Wall
2019年/イギリス/92分/ドキュメンタリー
https://unitedpeople.jp/africa/
2023年4月22日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

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