会計不正は大きく2つに分けられる

上述のように「財務諸表不正」は売り上げや利益をかさ上げする場合のように「数字をいじる」こと自体を目的とするものです。したがって、当然に会計不正を伴います。また、「資産の不正流用」などが行われた場合も、その事実を隠すために辻褄合わせの会計操作を伴うケースが一般的です。

日本公認会計士協会が2018年6月26日に公表した経営研究調査会研究資料第5号「上場会社等における会計不正の動向」という資料でも会計不正を「粉飾決算(Fraudulent Financial Reporting)」と「資産の流用(Misappropriation of Assets)」に分類しています。こうした分類を意識しながら会計不正の例を確認してみましょう。

■会計不正の例

・プレッシャーが要因で売り上げの過大計上に

典型的な会計不正として売り上げの過大計上が挙げられます。例えば、メーカーである親会社が子会社に対して業績について加重なプレッシャーを与えている場合、子会社が業績を良く見せるために売り上げを早期計上するケースが考えられます。上述した経営研究調査会研究資料第5号でも、子会社の営業部から製造部に具体的な金額の指示がなされ、製造部で出荷の前倒しの処理を行ったケースが紹介されています。業務システム上で不整合が生じないよう仕入部材も同時に前倒し計上しているものでした。

・管理会計上の利益に固執して経費を先送り

本来計上すべき経費の計上時期を意図的に遅らせることも考えられます。経営研究調査会研究資料第5号では、ある化学メーカーの中国子会社において、複数の営業担当者が販売促進費の計上を意図的に先送りしたケースが紹介されています。このケースでは、管理会計上の利益に固執するあまり、経費の先送りに結び付いたようです。販売システムに登録された販売促進費予算の確定処理をわざと後回しにする手法となっています。

・その他の事例

上記2つの事例は会計不正の2分類でいうと「粉飾決算」に該当するものです。同じく「粉飾決算」に該当するものでは、固定資産の減損処理を回避するために虚偽の計画見通しを提示する、協力会社間で実態のある商品もしくは架空の商品を循環させる、在庫の数量や評価を水増しして利益をかさ上げするなどの事例があります。

また、「資産の流用」に該当するものでは、備品などを私的に購入する、請求書を偽装して経費を水増しする、得意先間で売掛金の残高を付け替えて入金額の一部を着服するなどの事例があります。

子会社特有の要因とは?

今回、紹介した各事例は子会社だけで発生する性質のものではありません。ただし、子会社は会計不正を招きやすい状況に陥りがちである点には留意が必要です。米犯罪学者のD.R.クレッシーによると、「機会」「動機」「正当化」の3要素がそろうと不正のリスクが高まるとされます(不正のトライアングル理論)。

親会社ほど管理レベルが高くなく、監視の目も行き届かない状況にあると、子会社の担当者に不正の「機会」を与えることになります。また、親会社から売上達成などについて過度のプレッシャーをかけられている状況では不正の「動機」も高まります。さらに、子会社側の認識として、親会社は子会社の置かれた状況にそぐわない要求をしていると感じる場合には「正当化」につながりやすくなります。

グループ全体の管理においては重要性に応じて緩急をつけた対応も必要となりますが、各子会社の目線に立つとどのような不正シナリオが考えられるのか常に念頭に置いておきたいものです。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)