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「キャッシュを使わずに株式を取得する!現物出資とM&Aの関係」しっかり学ぶM&A基礎講座(8)

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自社株対価TOB現物出資

現物出資における他のメリットとしては手元資金がなくてもM&Aを実施できることが挙げられる。例えば、自社株を対価としたTOB現物出資の枠組みで実施することになる。自社株対価TOBは資金的に余裕のない新興企業が他社の買収を実施したい場合や融資だけでは買収資金が手当できない大型案件にも活用できる手法として期待される。

ただし、会社法上は先ほど触れた検査役による調査が必要となるほか、株価の変動によっては株式の有利発行となるため株主総会特別決議が必要になるなどのハードルもある。現状では産業活力再生法などの特別法でこうした使い勝手の悪さに対処しているところだ。

「自社株式を対価とした株式 取得」による事業再編の円滑化措置の創設 2018年度(平成30年度)税制改正で

現物出資では課税関係にも留意が必要

現物出資では課税関係にも留意が必要だ。例えば、経営不振の企業がDESを行った場合、実質的に債権者から債務を免除してもらうことになるため、債務消滅益に課税されるケースが考えられる。また、DESに応じることとなった債権者側でも、合理的な再建計画によらないDESであれば、会計上は債権譲渡損が生じながらも税務上は寄附金として損金計上が制限される可能性がある。

また、自社株対価TOBにおいても、売り手企業の株主に株式譲渡益に対する課税が生じるという難点がある。売り手企業の株主はTOBに応じることで保有株式を手ばなす代わりに買い手企業の株式を手に入れることになるが、税法上はこれが株式の譲渡とみなされるためだ。

ただし、この点に関しては、平成30年度税制改正において株式譲渡益の繰延を認める特例が創設されることとなった。合わせて改正される産業競争力強化法を前提とした時限的な措置ではあるものの、自社株対価TOBの今後の活用が期待される。

今回ご紹介した事例は現物出資を活用した事業再編やM&Aの一例に過ぎない。こうした取引手法は定番のものが踏襲されることが多いものの、今後新たな手法が生み出される可能性もある。近い将来、仮想通貨を現物出資して株式を取得するというような取引も現れるのかもしれない。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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