数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Onlineがおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「スモールPMI実務入門」 寺嶋直史ら6人による共著、中央経済社刊
M&Aを行ったあとにシナジーを発揮し、買い手企業、買収された対象企業ともに成長するためには、PMI(合併後の統合プロセス)が重要になる。再生コンサルタントを中心にM&Aアドバイザーや中小企業診断士、税理士、弁護士、Webマーケターら6人からなる著者らは、中小企業M&A(スモールM&A)のPMIは「事業再生コンサルティングそのもの」と力説する。
スモールM&Aは失敗が多く、その原因の一つに事業再生コンサルティングの難易度が高いため、このノウハウを持ったコンサルタントが少ないことがあるという。
そもそもスモールM&Aでは、対象となる企業の事業内容や決算書、契約関係などに毀損(きそん)や不備があるケースが多い。にもかかわらず、事業や財務を事前に詳しく調べるデューデリジェンスが行われることが少ない。売買単価が低いため、こうした調査に費用をかけられないためだ。
さらにM&Aアドバイザーである仲介会社やフィナンシャルアドバイザー(FA)が、M&Aを成立させることに力を注ぎ、対象企業が抱える事業や財務の問題点にあまり関心を払わないことも、スモールM&Aが失敗する要因になると警鐘を鳴らす。
そのうえで、PMIで求められるコンサルティングは対象企業の経営改善を行い、対象企業と買い手企業のシナジーを発揮させることであると断言。そのためには対象企業の問題点と原因を把握し、改善案を提案するとともに、買い手企業の強みを把握しシナジーの施策を提案する必要があると説く。
本書はこうした立場に立ち、中小企業経営者に向けて書かれたもので、PMIが何なのか、M&Aの目的は何なのかといった初歩的な内容から、デューデリジェンス(財務、法務、営業、製造など)のやり方、スモールPMIの進め方、許認可などの手続き、事業計画の作り方、シナジーを生み出す方法などについて取り上げた。
巻末には実際にスモールPMIを行う際に利用できる経営分析シートと事業調査報告書をダウンロードできるようにしてある。M&Aを考えている経営者の方が、PMIについての基礎知識を広め、具体的な方法について知るのに適した書籍といえそうだ。(2023年4月発売)
文:M&A Online