ネット社会のキャッシュレス化

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
キャッシュレス決済の手段も増えている

「平成」は、インターネットが一般化し、ネット社会が事実上誕生、成長した時代でした。それも最初はパソコンが主流でしたが、今ではスマホ中心に拡大しつつあります。誰もがiPhoneの誕生を予測できなかったように、今年から始まる新元号の元ではどのような社会になるのか予想できませんが、ネット社会の成長の段階で間違いなく日本で進むこととして、「キャッシュレス化」があります。

今回は、このキャッシュレス化をテーマに取り上げてみます。

1.消費増税対策とキャッシュレス化

我々消費者に身近な、かつ生活への負担が大きい消費増税ですが、過去2度延期されてはいますが、このまま行けばさすがに今回は延期されることはないでしょうから、10月1日に予定通り消費税率の10%への引上げが行われる予定です。

消費税率Upは消費者からみれば、単純に支出増になりますので、政府は前回増税時のような駆け込み需要での反動減が起きないよう、いくつかの政策を発表しています。

昨年の12月21日に閣議決定された、平成 31年度税制改正大綱においても、消費増税に対する需要変動の平準化等の観点から、住宅ローンの所得税額控除期間の延長(単純な延長ではなく、消費税率2%引上げ分の負担に配慮したもの)や、自動車税の減税(自動車取得税は廃止)等、税制面からの消費増税対策が明らかになっています。

なお、消費税率が10%となっても、飲食料品や新聞は軽減税率制度が適用され、8%のまま据え置かれます。但しこの制度は、みりん風調味料は該当するが、みりんや料理酒は該当しない、栄養ドリンクもオロナミンC(清涼飲料水)は該当するが、リポビタンD(医薬部外品)は該当しない、さらに、日刊紙の定期購読は対象だが、電子版やコンビニでの販売は該当しない、といった、専門家でも判断に窮することもありそうな、かなり複雑な制度となっています(先述のような例は、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」国税庁消費税軽減税率制度対応室、によりまとめられていますが、実に84個の事例があり、実際の現場では事例にないようなケースが沢山出てくることが想定されます)。

また、消費増税対策と日本のキャッシュレス化率上昇の二兎を追える政策として、中小店でキャッシュレス決済した際のポイント還元策が検討されています。

当初は増税分の2%を還元する話でしたが、首相の鶴の一声で還元率は5%で話が進んでいるようです。中小事業者保護の色彩もあるのだと思いますが、そもそも大企業は対象外、中小事業者も大手チェーンのフランチャイズの場合は還元率が2%になる、キャッシュレス決済に対応する専用の端末がない場合は新規に設置、ポイント還元に対応するためのシステム変更が必要といった時限措置のため、消費喚起の効果が限定的なこと、システムコスト等の費用対効果も踏まえて、実現可能性のハードルはかなり高そうです。

消費増税対策とキャッシュレス化の推進を一度に進める妙案があればいいですが、当該制度は導入されるとしても、増税時からオリンピック前までの9か月間のみの実施ということなので、少なくともキャッシュレス化推進の効果も限られるのではないでしょうか。

キャッシュレス化と言っても、現在流通している紙幣・硬貨が電子データに置き換わるものであり、企業間取引や国民の生活の重要なインフラであること、また日本でキャッシュレス化が進めば、政府としても、電子データでお金の動きを把握しやすくなり、脱税・マネーロンダリング・紙幣の偽造等の犯罪防止を効果的に行いやすくなる利点があるだけに、今回の増税対策にかこつけた場当たり的な施策ではなく、キャッシュレス化の手法として、ユーザーの利便性やセキュリティ、導入コスト等の優劣を踏まえた上で、どの規格を中心に日本のキャッシュレス化を推し進めるのか、長期的な視点でしっかりとグランドデザインを描いて欲しいと思います。

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5