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【専門家に聞く】介護業界のM&A最新事情(3)

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株式会社高齢者住宅新聞社 代表取締役社長 網谷 敏数氏

損保ジャパンによるワタミの介護買収は、業界再編の第1幕

――最近の介護業界のM&Aをいくつか挙げていただけますでしょうか。

 直近の例では、「損害保険ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン)」<8630>による「ワタミの介護」買収が記憶に新しいところです。ワタミ<7522>は主業である居酒屋事業の不振により、好業績だった介護事業を売却せざるを得なくなった訳ですが、買収額は210億円にも上り、これほど大手企業同士のM&Aはレアケースでしょう。

株式会社高齢者住宅新聞社 代表取締役社長 網谷 敏数氏

 損保ジャパンは既に複数の介護会社へ出資を行っており、他の保険会社に比べると介護業界に精通していたと言えますが、これで本格的な進出を果たした格好になりました。ワタミの介護は食事がおいしいこと以外にも、入居者の自立支援としておむつゼロ、特殊浴ゼロ、経管食ゼロ、車いすゼロという「4大ゼロ」を推進するなど、特徴的な取り組みで注目されていましたから、損保ジャパンは、今後ブランディングをどうするのか興味深いところです。買収後のワタミの介護の新社名である「SOMPOケアネクスト」にブランドを切り替えるのか、4大ゼロなど標榜していた特徴をどうするのかなど、利用者ならずとも気になるところです。

 また、アパートの建築請負および入居者募集や監理などを総合的に手掛ける「大東建託」<1878>の動きも異業種参入事例として知られています。グループ会社でデイサービスを中心とした介護事業を行っていますが、15年11月、医療・介護事業を提供する「ソラスト」<6197>に100億円規模の出資を行い、資本業務提携を締結しました。グループ・インして、より介護事業に注力したいという戦略が垣間見えます。

「ソニーフィナンシャルホールディングス」<8279>もグループ内に介護専門の会社を持ち、これまでは一軒一軒老人ホームを新設してきましたが、13年には横浜市で介護付き有料老人ホームを運営する「シニア・エンタープライズ」の全株式を取得して完全子会社化、15年5月にも、同じく横浜市で介護付き有料老人ホームなどの運営会社を傘下に持つ「ゆうあいホールディングス」の株式14.5%を取得しています。

 これら大手企業によるM&Aの特徴は、潤沢な資金力を生かして数十棟以上の施設を持つ介護事業者を買収しているということ。ゆうあいであれば29棟、ワタミの介護は100棟以上を保有しており、スケールメリットを取りにいく戦略です。これらは双方の良好な関係性の中で実施されており、複数の施設を運営して伸びてきた介護事業者もいよいよ転換期を迎え、望んで大手の傘下に入るケースも多いのではないかと見ています。(次回に続く

取材・文:M&A Online編集部

網谷 敏数

網谷 敏数(あみや・としかず)
青山学院大学卒業後、株式会社全国賃貸住宅新聞社入社。全国の有力管理会社、ハウスメーカーなどの取材を重ね、全国的なイベントとなった「賃貸住宅フェア」の企画・運営に携わる。平成15年3月、同社社長に就任。平成18年4月から『高齢者住宅新聞』の創刊・発行に携わり、介護・医療などをテーマに取材活動を行なっている。
『高齢者住宅新聞』 http://www.koureisha-jutaku.com/


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