真保裕一の小説を中島健人主演で映画化『おまえの罪を自白しろ』

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© 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

権力に固執する国会議員の親子関係を描く

政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の孫が誘拐され、身代金の代わりに「おまえの罪を自白しろ」と脅迫された。息子で議員秘書を務める主人公が国政を揺るがす大事件に挑む。映画『おまえの罪を自白しろ』は「ホワイトアウト」などで有名な真保裕一が執筆した同名小説を原作とし、主人公の宇田晄司を中島健人、孫を誘拐された国会議員の宇田清治郎を堤真一が演じている。監督は日本テレビ系ドラマ「Mother」(2010年)、「Woman」(2013年)の演出で知られる水田伸生が務めた。

<STORY>

政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司(中島健人)は建築会社を設立するも倒産し、やむなく国会議員の父・宇田清治郎(堤 真一)の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。そんなある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の幼い娘が誘拐された。犯人からの要求は身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫。それは決して明かすことが許されない国家を揺るがす”罪”だった。権力に固執し、口を閉ざす清治郎。晄司はタイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか!?

『おまえの罪を自白しろ』画像1
© 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

複層的に描かれる真保裕一のミステリー小説

ミステリーの醍醐味は人によって異なるが、犯人が判明するまでの緊張感や緻密なトリック、意外な結末を挙げる人は多いだろう。真保裕一のミステリー小説は、そこに複層的に描かれる人間模様が折り重なる。本作の原作もそう。主人公一家の父親が政治家であることから生まれる葛藤に加え、現職の内閣総理大臣を巻き込む政治スキャンダルで蠢く思惑や、法務大臣による指揮権発動を巡る駆け引きなど政治の舞台裏が細やかに描かれる。家族の物語としても、政治ドラマとしても読み応えがある作品だ。

『おまえの罪を自白しろ』画像2
© 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

水田伸生監督は原作を読み、父親に対する葛藤を男兄弟2人のうちの1人を軸に描いているところが「エデンの東」と重なったという。映画は原作のすべてを描くのではなく、父と次男の関係性に焦点を当て、誘拐事件解決までを一気に描き切った。

中島健人の新たな一面も

主人公の宇田晄司を演じているのは中島健人。ティーンエイジャー向けのキラキラした作品に出演しているイメージが強い俳優だが、30歳を目前に前作『ラーゲリより愛を込めて』(2022年)から方向性が変わってきた。

水田伸生監督は中島のことを「明るく見えて、実はちょっと影がある」と評し、彼の“演出家気質”を見込んで本作に起用したという。父親の政治スキャンダル発覚のきっかけがわかり、与党幹事長のところに晄司が乗り込んでいくシーンは、劇伴が鳴り響き、緊張感が高まる本作の見せ場である。

『おまえの罪を自白しろ』画像3
© 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

晄司は意外な言葉を放って幹事長を唸らせ、静かに続けた言葉から晄司が政治の道に進む覚悟を決めたことが伝わってくる。中島健人のファンならずとも引きこまれる演技である。

原作から設定を変更した点も

最後に本作の魅力をもうひとつ。誘拐事件解決までの展開は原作と同じだが、映画では犯人の設定を変えている。誘拐事件の被害者一家が、実は社会的には加害者であったとしているのだ。誰が自分の人生を変えたのかと訴える犯人の切ない声が耳に残り、追い詰められた人間の哀しみが物語の余韻として残った。映画は小説よりも奇なり。原作を読んだ人も十分楽しめる結末だ。

文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

<作品データ>
タイトル:『おまえの罪を自白しろ』
出 演: 中島健人 堤 真一
池田エライザ 山崎育三郎 中島 歩 美波
浅利陽介 三浦誠己 矢柴俊博 柏原収史 中村歌昇 佐藤恋和 アキラ100% 山崎 一
尾美としのり 池田成志 橋本じゅん 春海四方 小林勝也 菅原大吉 升毅 平泉 成
尾野真千子 金田明夫 角野卓造
監 督: 水田伸生
脚 本: 久松真一
原 作: 真保裕一『おまえの罪を自白しろ』(文春文庫刊)
主題歌 : B’z「Dark Rainbow」(VERMILLION RECORDS)
配 給: 松竹
(C)2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/omaenotsumi/
2023年10月20日(金) 全国公開

『おまえの罪を自白しろ』ポスタービジュアル
© 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

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