経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。

「マネーボール」(2011年)

マネーボール

米国のノンフィクション作家、マイケル・ルイスによる「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」を映画化(ちなみに、以前紹介した映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」も彼の著書が原作だ)。弱小貧乏球団オークランド・アスレチックスのGMを務めるビリー・ビーンが、いかにしてアスレチックスを “勝てる”球団にしていったのかを描く。

【あらすじ】

2001年のシーズンオフ、オークランド・アスレチックスからスター選手3名が抜けることが確定した。アスレチックスのGMビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は来季に向けて3人の穴を埋めるべく、トレード交渉を開始。交渉先のクリーブランド・インディアンスのオフィスで、イエール大で経済学を学んだというピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と出会う。統計学を用いて選手分析を行うピーターのやり方に関心を示したビリーは、ピーターを補佐役として引き抜き、これまでの球界の常識を覆すようなやり方でチームの再建を試みる。

【見どころ】

「セイバーメトリクス」による評価基準の転換

どのチームもいい選手、活躍してくれる選手が欲しいのは明解だ。多くのスカウトたちがその目で選手を値踏みして、選手の価値が決まる。だが、スカウトたちの長年の経験と直感はあくまでも主観による部分が強い。スカウトたちが選手の見た目や付き合っている彼女でさえも気にしているという描写は、まさにそれを物語っているようだ。
ビリーが導入した統計学的アプローチは「セイバーメトリクス」と呼ばれ、野球ライターのビル・ジェイムズが1970年代に提唱したもの。さまざまな統計から選手を客観的に評価する。従来、打者は打率や打点などで評価されてきたが、点を得るためには出塁しなくてはならないと、出塁率を重要視しているのが大きな違いだ。安打も四球も出塁には変わりない。
映画冒頭で、ヤンキースの総年俸は1億1445万7768ドル、アスレチックスは3972万2689ドルと出てくる。野球界にも格差が広がる中、ビリーはこれまでの基準とは異なる基準で選手を評価することで、他のチームからは過小評価されている選手を安価で獲得することができた。
競争社会の中で弱者が生き残っていくには、物事を新たな視点から見ることが必要だと教えてくれる。

垣間見える球団のフロント事情

ビリーが新たなやり方に反発するヘッドスカウトをその場で首にしたり(事実、25名ものスカウトを解雇したらしい)、戦力外やトレード対象となった選手にビジネスライクな通達をしたりと、球団運営の裏側が垣間見られるのも本作の見どころの一つ。中でもトレード最終日にビリーが複数のチームのGMと同時進行で電話交渉をし、獲得したい選手の市場価値を操作する場面は秀逸だ。交渉は心理戦であることを改めて思い知らされる。思い描いたシナリオ通りになった時のビリーとピーターのガッツポーズには思わずニヤリとしてしまうはずだ。

文:M&A Online編集部