不特定多数の技術力のある個人と、業務発注をしたいクライアント企業をインターネット上で結び付ける「クラウドソーシング」ビジネス。在宅ワークなど働き方の多様化と、新しい人材との出会いやコスト抑制を図りたい企業の双方のニーズを実現するモデルとして、近年、大きな広がりを見せている。

そのクラウドソーシングを手がけるMIKATAは、時流に乗って急速に発展。設立2年後の今秋に事業の売却が成立した。的確にビジネスシーズ(種)をとらえ、次々と新事業を立ち上げる気鋭の起業家に、その事業観やM&A観を伺った。

大手が取り組みにくい事業の種を見つけ、育てる
社会的役割分担としてのM&Aとは

<お話>株式会社MIKATA 前代表取締役 池田 朋弘 様(株式会社ポップインサイト 代表取締役CEO)

--池田様のご経歴やMIKATAを設立された経緯について教えてください。

私は現在32歳ですが、学生時代から含めると4社の立ち上げに携わりました。1社目は大学在学中で、1つ上の学年に優秀な方がいて、その方と一緒にCTOとして起業しました。地域のクーポンサイトから始まり、途中から近隣の店舗にフリーペーパーを置いてもらう事業などを展開、その後は中小企業向けCMSを開発しました。その会社は大学4年の時に上場会社に売却することになりました。これが最初の起業と売却の経験になります。

大学卒業後はWEBコンサル会社に入社したものの、学生時代に一緒に起業した方がまた新しい会社を立ち上げていて、その事業のマーケティングを手伝ったりしていました。これが2社目です。周囲では起業が普通の選択肢としてあって、しかも彼らはワクワクしながらビジネスをやっています。

私も海外で取り組まれている「リモートユーザテスト」という仕組みを自分で作り、それをもっと広げるため2013年に独立して(株)ポップインサイトというリサーチ会社を設立しました。これが3社目の立ち上げです。

ポップインサイトでは、リサーチに協力してくれるモニター人員を集める必要がありました。そこで、信頼できる口コミレビューサイトがあれば、ポップインサイトにモニターを誘導できるのではないかと考え、個人事業として口コミサイトを開設しました。これが見事に当たりまして、モニター人員の余剰も生まれました。そこでポップインサイト以外の受け皿として、クラウドソーシングサイト「在宅ワークス」を作り、業績が一気に伸長しました。

2015年1月には個人事業主から法人に切り替え、4社目となる(株)MIKATAを設立。ちょうどクラウドソーシングの市場が拡大する中で、時流にうまく乗る形で成長することができました。

--会社の譲渡を検討されたキッカケは何だったのでしょうか?

もともと私の周囲に会社を起業して売却する人が多くいたので、会社を売却することに抵抗はありませんでした。売却を前提に事業を行うことに良くない印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、私の感覚としては、大手企業がなかなか取り組みにくい事業の種を見つけてきて育てる、新規事業開発を代行しているようなものであり、社会的な役割分担のようなイメージでしょうか。

また私は、経営者として一つの企業を大きく育て上げるというよりも、起業家として様々な事業をスモールスタートで立ち上げていくことに面白みを感じる人間だということがこれまでの経験を通じて分かってきましたので、今後の選択肢の一つとしてM&Aという手段を熟知しておくことは必須であると思っていました。

このような背景の中で、MIKATA事業が順調に成長してきたことと、一方でメインで行っていたポップインサイトも成長ストーリーが見え、さらに集中して取り組む必要があったことで今回の相談に至りました。

当然ながらMIKATAは時流に乗り成長もしているので、売却せずに自分で経営していても良いのではないか?という考えもありました。手放す必要はない、もったいないのではないだろうかと。そのためM&Aありきではなく、あくまで一つの選択肢としてM&Aの可能性は探りつつも、一方では自ら成長させていく体制づくりも同時に検討していました。

譲渡した事業が成功すれば信頼が生まれ、
その信用が経営者としての貴重な個人資産となる

--譲渡を検討する中で、優先順位の高い条件とは?

経済的条件を除き、一番重視したのは「新しい株主の元でMIKATAが成長できるイメージが持てる」こと、つまり相手の会社に買収が有益であると思ってもらえるかどうかという点でした。

後継者不在で会社を譲渡される経営者の多くは、会社の譲渡がすなわちビジネスからの引退になりますよね。一方、私はこれから数十年に渡るビジネス人生のスタート地点に立っているという認識ですので、今回の譲渡がうまくいかず悪評が立ってしまうと、今後のキャリアに影響を及ぼします。

逆に、新しい株主の元でも成功したと思ってもらえたならば、その信用が経営者としての個人資産になると思います。実際、今回のM&Aの相談を通じ、譲渡先のインググループ様とはポップインサイトも含めたより広範囲の協業関係を構築中ですし、最終的に事業譲渡には至らなかった別の企業様とも別件で協業締結を相談中です。「売却ありき」ではなく、「自分の事業、相手先の事業、双方のさらなる成長ありき」で考えることが重要ですし、それが相手方への誠意だと思います。

--同じような立場の経営者に対して一言お願いします。

ベンチャー起業家が会社を譲渡したというと、華々しい話が多いですよね。斬新なアイデアや技術があって、大金で取引されるようなM&Aはニュースになりやすい。でも実際には、もっと普通に起業をしている経営者がたくさんいらっしゃいます。そのような経営者が、早い時期からM&Aという選択肢を知っていれば、今後取り得る経営判断が変わってくるのではないかと思います。

1つでも事業譲渡が成功すれば、資金的な余裕を持てますし、次の投資においても余裕をもって判断することができるはずです。

私と同年代の若い経営者でも、「M&Aについて知らないから選択できない」という方がいらっしゃると思いますが、知らない方がリスクが高いのではないかと思います。M&Aを恐れずに、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

--本日はありがとうございました。

お話:株式会社MIKATA 前代表取締役 池田 朋弘 様(株式会社ポップインサイト 代表取締役CEO)
M&A情報誌「SMART」より、2017年1月号の記事を基に再構成
まとめ:M&A Online編集部

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