大量保有報告の制度は、上場会社の株式などが大量に買い集められる場面などを想定し、市場の公平性や透明性を高め、投資者保護を徹底する必要性があることから平成2年に導入されたものです。つまり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす事項を適時に開示することが目的といえます。
ただし、実際には投資者が利用するだけでなく、株式を発行している企業自体が自社に対する敵対的な買収が行われていないか監視したり、自社に対してガバナンス改善などを求める「株主アクティビズム」の動向を捕捉したりする手段にもなっています。
株券等保有割合が減少したことによって変更報告書を提出する場合で、特に短期間に大量の株券等を譲渡したとされる一定の基準に該当する場合には、原則として「譲渡の相手方及び対価に関する事項」を記載した変更報告書を提出することになっています。こうした事項も株式を発行している企業にとって重要な情報源といえるでしょう。
なお、過去に提出した大量保有報告書あるいは変更報告書を訂正する場合には「訂正報告書」の提出が必要になります。
以上のように、大量保有報告書は投資者サイドにとっても、株式を保有される企業サイドにとってもセンシティブな情報を含むものです。適切に運用されることはもちろん、開示までのタイムラグなども含め、各利害関係者にとって公正かつ公平な制度であって欲しいものです。
文:北川ワタル
世界最大級の投資運用会社である米国のブラックロックが、日本の株式市場での売買社数を減らす傾向にある。同社が提出した大量保有報告書で分かった。