経験少ないM&A 

川崎汽船はこの100年間、M&Aにはほとんど手を出さなかった。2011年以降に適時開示したのは重量物貨物輸送事業を手がけるドイツのSAL社に関する案件だけだ。 

同社は2007年に海運事業の多角化を目的に、SAL社株式の50%を取得し重量物輸送事業に参入。2011年には残る50%を追加取得し完全子会社化した。しかし2008年の世界金融危機以降、エネルギー資源価格の下落に伴いSAL社の業績が低迷。このため2017年にSAL社の全保有株式をドイツのSALTO HD に売却した。 

エフィッシモ キャピタル マネージメントは保有株式の買い取りを迫るのか、それともM&Aを誘導するのか、さらに市場での売却はあるのか。

営業赤字に陥る川崎汽船にとって自社株買いは資金面から難しそうだ。また100年の歴史を持つ同社にとって経験の少ないM&Aにはとまどいがありそうだ。 

では市場での売却はどうだろうか。エフィッシモ キャピタル マネージメントが川崎汽船株を取得した2015年9月の株価は2600円ほどで、その後株式を買い増す期間には3000円を超える時期もあった。ところが2018年7月に2000円を割り込み、2019年に入ってからは1500円前後で推移している。現在が売りやすいタイミングとは言えそうにない。 

自社株買い、M&A、市場での売却はいずれもハードルは高いとなると、エフィッシモ キャピタル マネージメントは次にどのような手を打つだろうか。注目が集まる。

川崎汽船の沿革と主なM&A
1919 川崎造船所の松方幸次郎社長が川崎汽船を設立
1934 最初のタンカーを建造
1960 鉄鉱石、石炭、 穀物、木材、チップなどの専用船化が進展
1964 タイに拠点を設置
1968 香港に拠点を設置
1974 シンガポールに拠点を設置
1969 主要航路のほとんどでコンテナ化を進展
1970 日本初の自動車専用船を建造
1983 日本初のLNG船を建造
2001 シンガポールに“K” Line Pte Ltdを設立
2003 ドイツに“K” Line European Sea Highway Services GmbHを設立
2003 ロンドンに “K” Line Bulk Shipping(UK)Limitedを設立
2007 ノルウェーで 合弁の「K Line Offshore AS」を設立
2007 ドイツのSAL社の株式50%を取得し重量物船事業に参入
2008 インドに “K” Line(India)Private Limitedを設立
2009 ブラジル沖 での採掘船事業に参画
2017 ガーナでFPSO(浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備)事業に参画
2018 川崎汽船、商船三井、日本郵船の3社が各々のコンテナ船事業と海外におけるコンテナターミナル事業をスピンオフしたうえ、それらを統合した新しい事業体としてオーシャン ネットワーク エクスプレス(ONE)を設立
2019 4月に創立100周年

文:M&A Online編集部