ヴァージニア会社の歴史に見る米国起業家精神の「もう一つの原点」|間違いだらけのコーポレートガバナンス(10)

alt

米国の源流はピルグリム・ファーザーズだけではない

我々が教えられる一般的な米国建国の歴史は、1620年にメイフラワー号に乗って米国にたどり着いた「ピルグリム・ファーザーズ」の物語から始まる。プリマス植民活動*だ。ヨーロッパでカトリック勢力に迫害されたピューリタン達が、理想のキリスト教国家の建設を目指して向かった新天地。それが北米大陸であるという物語だ。
 *1620年から1691年にかけて実施された北米大陸における初期の英植民活動

そして、マックス・ウェーバーが喝破したように、プロテスタントの禁欲精神と天職思想が資本主義発展の重要な原動力となったとされる。禁欲精神と天職思想が起業家精神の一部を説明していることに、疑いの余地はないだろう。成功する起業家は得てして質素で、かつ自分の才能を心から信じている。それは筆者の身近な実例でも、多く挙げることができる。

しかし、実はメイフラワー号がマサチューセッツ湾に到着する20年以上前に、北米大陸を目指した人々がいる。それがヴァージニア植民活動だ。筆者はこのヴァージニア植民活動の歴史の中に、米国における起業家精神のもう一つの原点があるように思う。

このヴァージニア植民の栄枯盛衰の歴史を理解することが、米国の起業家精神の「もうひとつの本質」を理解するためのヒントになるのではないかと考えている。

元祖エンジェル投資家「トーマス・スマイス」という人物

ヴァージニア植民の歴史を振り返るに際して、一人の重要人物を紹介したい。この人物の視点に立つことで、ヴァージニア植民の本質を理解できるように思うからだ。

その人物は、Sir Thomas Smythe (トーマス・スマイス)。16世紀後半から17世紀前半にかけて英国経済界で活躍した特権商人であり、政治家であり、外交官だ。どのような過程で彼が財を成したか詳細は不明だ。

ただ、分かっているいることがある。スマイスは、その財の多くをベンチャー投資に使った。このスマイスのような篤志家は、16世紀後半の英国にはすでにかなりいたようだ。

そのような篤志家の中でも、スミスは出色の人物だ。彼の投資ポートフォリオには、大物がいくつもある。そのうちの1社が本稿でも以前取り上げた「イギリス東インド会社」だ。スマイスは東インド会社の初代総督でもある。

そしてもう1社が、ヴァージニア植民を推進したヴァージニア会社 (正確にはロンドン会社とプリマスのバージニア会社の2社。以下、総称してヴァージニア会社)である。

最初に結論を書こう。スマイスの投資ポートフォリオのうち、東インド会社は世界を支配する巨大企業になった。投資実績としては、場外ホームランどころではない。現代に例えるなら、GAFAに全部まとめてシード投資したような成功だろう。

これに対してヴァージニア会社はどうだったか。資金繰りに苦労しながら、なんとか数十年運営された。だが、会社として成功することはなく、最後はイギリス王室事業となり歴史の泡と消えた。スマイスは、この成功と失敗の両方にかかわった人物だ。

東インド会社は大成功を収め、欧州辺境の弱小国を「大英帝国」に押し上げた「植民地ガバナンス」の中心的存在として重要な役割を果たした。では、ヴァージニア会社はなぜ失敗したのか。そして、ヴァージニア会社の失敗から何が生まれたのか。それを考察してみよう。

NEXT STORY

「スタートアップ」「起業」に興味があったらこれを観よう!

「スタートアップ」「起業」に興味があったらこれを観よう!

2019/09/15

スタートアップとは、今までに無いビジネスを起こし世の中を変える事らしい。今秋、日本初のスタートアップを題材にした映画が誕生した。ストーリーが進むにつれスタートアップとは何かがわかるようになる。9月6日より全国で上映中。