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MOONRAKERSが切り拓くアパレル業界の新常識

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MOONRAKERS TECHNOLOGIES 代表取締役/CEO 西田 誠 氏

ストライク<6196>は10月24日、業種・業界・地域の壁を越えたイノベーションの創出を支援する「Tokyo Venture Capital Hub」(東京都港区)でスタートアップと事業会社の提携促進を目的としたイベント「第48回S venture Lab.」を開催した。

今回は「東レ発スピンオフが創る新常識 -進化か停滞か、迫る分岐点-」をテーマに、2023年にスピンオフ形式で独立し、D2Cモデルで急成長を遂げているMOONRAKERS TECHNOLOGIES から代表取締役/CEOの西田誠氏が登壇。西田氏は、アパレル産業が抱える構造的課題や新たなビジネスモデルの可能性について具体的な事例を交えながら語り、参加者に業界の未来を考える視点を提供した。

また、モデレーターにはMOONRAKERSのリード投資家でもある01Booster Capitalの立山冬樹氏を迎え、西田氏の挑戦を掘り下げながら、アパレル産業の未来を切り開くための戦略やスピンオフの意義について話が進められた。

東レ発スピンオフが創る新常識 -進化か停滞か、迫る分岐点-

トークセッションの冒頭、西田氏は、自身が立ち上げたアパレルブランド「MOONRAKERS」の経緯を語った。「私たちは大企業の事業や技術を独立した会社として切り出し、技術者自らが製品化と直販に踏み出す『スピンオフ』という手法を選びました」と説明。スピンオフにより、大企業では難しいスピード感で技術と市場を直接結び直すことができると語った。

1993年に東レに入社した西田氏は、素材開発や新規事業に携わり、ユニクロとの大型契約を実現した“伝説の営業マン”として知られる。東レでの経験を通じ、アパレル業界では低収益構造や価格制約が先端素材の普及を妨げている現状を実感したという。こうした課題を解決するため、独立してスピンオフを活用し、自らの手で高機能素材を活かした衣服の開発・販売を行う道を選んだ、と説明した。

「私たちが選んだのはスピンオフという道」と語る西田氏
「私たちが選んだのはスピンオフという道」と語る西田氏

進化する服がもたらす生活変革

MOONRAKERSの代表的な製品であるTシャツは、吸汗速乾、汗じみ防止、消臭など、12の機能を複合的に備えている。特に吸汗速乾性能は基準値の約2倍(60分→約30分)を実現しており、脱水後でもすぐに乾いて皺になりにくいという特長がある。この快適さが家事負担や外出時のストレスを軽減し、多汗症のユーザーからも強い支持を集めている。

「基準値を大幅に超える設計が不可欠だと考えている」と西田氏は語る。

実際に、配送業に従事する方や多汗症のユーザーからは「人生が変わった」との声も寄せられており、MOONRAKERSの製品は、単なる衣服を超えた“生活を変える体験価値”を提供するブランドとして注目を集めている。

MOONRAKERSについて説明する 西田氏(左)と、01Booster Capital パートナー 立山 冬樹氏(右)
MOONRAKERSについて説明する 西田氏(左)と、01Booster Capital パートナー 立山 冬樹氏(右)

アパレル業界の構造的課題とムーンクラスター構想

日本のアパレル産業では、長年にわたり供給過多の状況が続いている。その影響で、低収益や低賃金が常態化し、国内技術力の衰退も見られる。西田氏は「アパレル業界は“オワコン”と言われるほど厳しい状況にある」と指摘し、国内縫製比率が約1.5%まで縮小している現状に強い危機感を示した。

こうした現状を踏まえ西田氏は、「技術を正しく伝え、共感と需要を喚起することで国内縫製の復興を目指す。日本のものづくりを取り戻し、産業を再編することで、関わる人々が豊かになる新しい繊維産業を創造したい」と自社で掲げる"ムーンクラスター構想”について力強く語った。

スピンオフの意義と意思決定のスピード

また、スピンオフによる独立がもたらした変化についても言及した。東レ在籍時には、社内稟議の遅延が新規事業の進行を阻む大きな課題だったという。

「社内稟議では数週間から数カ月かかる意思決定も、スピンオフ後は20分で判断できる。『2万分対20分=1000倍』のスピードが、新規事業の成否を左右する」と西田氏は語った。

スピンオフによる独立は、技術革新と市場ニーズを直接結びつける仕組みとして機能し、MOONRAKERSの急成長を支える原動力となっているのだ。

「挑戦する心が日本に戻りつつある」と西田氏は語り、参加者に向けて「小さな挑戦から始めてほしい」とメッセージを送った。MOONRAKERSの取り組みは、アパレル業界にとどまらず、他業界にも新たな可能性を示す事例として注目されている。

ReCute 代表取締役CEO山下 萌々夏 氏(左)、MOONRAKERS TECHNOLOGIES 代表取締役/CEO 西田 誠 氏(真ん中)、01Booster Capital パートナー 立山 冬樹氏(右)
ReCute 代表取締役CEO山下 萌々夏 氏(左)、MOONRAKERS TECHNOLOGIES 代表取締役/CEO 西田 誠 氏(真ん中)、01Booster Capital パートナー 立山 冬樹氏(右)

ヘアアイロンのレンタル事業を手がけるReCute

第二部では、スタートアップによるピッチが行われた。ReCuteの代表を務める山下萌々夏氏が登壇し、ヘアアイロンのレンタル事業を軸にした新たなビジネスモデルを紹介した。商業施設や美容メーカーとの連携を通じて、女性のニーズに応える革新的なコマースプラットフォームを構築する取り組みをプレゼンテーション。具体的な事業計画や将来の展望が語られる中、参加者はその斬新なアイデアに興味を示し、サービスの可能性に期待を寄せていた。

ヘアアイロンのレンタルスポットについて紹介する山下氏
ヘアアイロンのレンタルスポットについて紹介する山下氏

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